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ダブルHOM干渉(7)

タイムコミュニケーションの原理を数式を用いて検証してみます。


dhomi_anime

上の図において、光源PDC1から放出される光子の量子状態|ψ1>と、光源PDC2から放出される光子の量子状態|ψ2>は数式(4), (5)のように表されます。


formula_b4_5

数式(4), (5)において、|0>はゼロ光子状態、|1>は1光子状態、|2>は2光子状態を表し、amnは光源PDCmから放出されるn光子ペアの確率振幅を表し、また、ケット内の添え字{i1, s1, i2, s2}はそれぞれ{PDC1からのアイドラー光子,PDC1からのシグナル光子,PDC2からのアイドラー光子,PDC2からのシグナル光子}を表しています。二つの非線形媒質出力を合わせた全系の初期状態|Ψ0>は,数式(6)のように表されます。


formula_b6

パラメトリック自然放出の性質により、シグナル光子とアイドラー光子は必ずペアで発生します。ただし,一度に何ペア出るかは確率的であり、出力状態は重ね合わせとなります。発生する光子ペア数の確率はポンプ光パワーに依存します。ここでは、ポンプ光パワーの設定により、3ペア以上発生する確率は十分小さいものとします。さらに、2光子吸収体TPA1, TPA2でバンチした2光子が吸収されるものとします。そうすると、検討対象の状態|Ψ1>は数式(7)ようになります。


formula_b7

光源PDC1, PDC2の出力特性が全く同じであれば、ハーフミラーHM1, HM2の出力においてアイドラー光子i1とアイドラー光子i2の区別やシグナル光子s1とシグナル光子s2の区別は原理的に不可能になります。そこで、|1i1>=|1i2>≡|1i>,|1s1>=|1s2>≡|1s>とすると終状態|Ψ2>は数式(8)のようになります。


formula_b8

ただし、ケット外の添え字{t1, t2, d1, d2}は、それぞれ{光子が光子吸収板T1に在る,光子が光子吸収板T2に在る,光子が光子検出器D1に在る,光子が光子検出器D2に在る}ことを表します。また、簡単のために|Ψ1>における各光子ペアの確率振幅とそれに対応する|Ψ2>における各光子ペアの確率振幅とは等しいものとしました。数式(8)は、HOM干渉によって同時計数器CCの同時計数率がゼロになることを示しています。


つぎに、アイドラー光子i1をシャッターSHで吸収する場合について考えます。この場合は、アイドラー光子i1とアイドラー光子i2の物理量(放出時刻やエネルギー)がそれぞれ独立に定まります。すると、EPR相関によりシグナル光子s1とシグナル光子s2の物理量もそれぞれ独立に定まります。したがって、シグナル光子s1とシグナル光子s2とは識別可能な光子になっています。そこで、終状態|Ψ'2>は数式(9)のようになります。


formula_b9

ただし、ケット外の添え字shは、光子がシャッターSHに在ることを表します。また、簡単のために|Ψ1>における各光子ペアの確率振幅とそれに対応する|Ψ2'>における各光子ペアの確率振幅とは等しいものとしました。 |Ψ'2>では、HOM干渉が成立しないので|Ψ2>の場合よりも同時計数率が増大します。つまり、上の図の装置ではシャッターの開閉に応じて、HOM干渉が遠隔選択され、同時計数器CCにおける同時計数率が変化します。この効果はタイムコミュニケーションに用いることができます。すなわち,アリスが送信情報に対応させてシャッターSHを開閉することにより信号を送信し、ボブが同時計数器CCで同時計数率の変化を測定することにより信号を受信するタイムコミュニケーションが成立します。

「ダブルHOM干渉」完



非決定性チューリングマシン

あなたは、どれだけ先の未来を予知したいですか。大地震の予知なら少なくとも1時間先、社会情勢の予知ならさらに先の未来を予知したいですよね。こう考えると、長時間先の予知はタイムコミュニケーションの重要な目標であることに間違いありません。


しかし一方、短時間先の予知が意味を持つ分野があります。それは、計算の分野です。


例えば、2の100乗個の解候補の中から1個の正解を見つけ出す場合を考えてみます。その場合、まず、解候補を2の99乗個のグループに2分して、どちらに正解があるかを予知します。次に、正解の入ったグループを2の98乗個のグループに2分して、どちらに正解があるかを予知します。このような予知を100ステップ繰り返せば、最終的に正解にたどりつけるでしょう。逆に、タイムコミュニケーションの情報伝達に沿って言えば、まず、1個の正解を確認した時点から、各1個からなる解候補の中から正解を選択する時点へ正解信号を送信します。つぎに、各1個からなる解候補の中から正解を選択した時点から、各2個からなる解候補グループの中から正解グループを選択する時点に正解信号を送信します。さらに、各2個からなる解候補グループの中から正解グループを選択した時点から、各4個からなる解候補グループの中から正解グループを選択する時点に正解信号を送信します。このような通信を100回行えば、グループ選択前の各時点に選択すべき正解グループを知らせることができます。このような解探索システムは、非決定性チューリングマシンとよばれているシステムに他なりません。下図は、簡単のために解候補を8個にした非決定性チューリングマシンの概念図です。


ntm

仮に、タイムコミュニケーションの1ステップが10マイクロ秒だとしましょう。すると、タイムコミュニケーションを用いた非決定性チューリングマシンは、2の100乗の解候補の中からおよそ1 ミリ秒で、すなわち一瞬で、正解を見つけ出すことができます。一方もし、しらみつぶしに正解を見つけるとしたら、仮に1回の確認が2の-39乗秒で済むとしても、正解にたどり着くまでに平均2の60乗秒かかります。つまり、365億5890万年という非現実的な計算時間を要することになります。

(つづく)



非決定性チューリングマシン(2)

タイムコミュニケーションを用いた非決定性チューリングマシン(以下NTMという)は、1機で並列性を実現するという点で量子コンピュータと似ています。しかし、量子コンピュータが量子力学的な重ね合わせにより並列性を実現しているのに対して、タイムコミュニケーションを用いたNTMは、古典的な混合状態により並列性を実現している点で大きく異なります。このため、量子コンピュータが特殊な計算のための専用機や補助プロセッサ(コプロセッサ)に留まるのに対して、NTMはどのような計算でもこなせる汎用計算機になりえます。


NTMの実現は、シンギュラリティ(技術的特異点)の幕開けを意味しています。というのは、NTMは我々人間を凌駕する科学的創造力を発揮すると考えられるからです。発明や発見を支えている科学的創造力は、最適解を見つけ出す能力です。従来のコンピュータは演算速度や正確性においては人間を圧倒していても、科学的創造力に関しては、人間に遠く及ばないものでした。例えば、様々な観測事実の因果関係を直観的に把握して物理法則を帰納し、その物理法則を体系化して新しい物理学的世界像を構築するようなことは、機械には真似ができないことだと思われていました。これは、進化の過程で我々人間が獲得した直観(ショートカットを可能にするアルゴリズムやデータ)をコンピュータが持っていないからだと考えられます。ところが、タイムコミュニケーションを用いたNTMは人間の直観を凌駕する超直観を持つといえるのです。


IBMのワトソンが人間のクイズ王に勝っても、我々は人間の地位が危うくなると心配することはありません。しかし、NTMが人間よりも正しく国家や会社を経営し、人間を圧倒するペースでノーベル賞級の発明や発見を成し遂げるようになったらどうでしょうか。我々は、何を励みにして生きていけばいいのでしょうか。これは、非常に興味深い問題です。


nobel_ai

ノーベルメダルと映画「2001年宇宙の旅」に登場するAI "HAL"


NTMに心(意識や自由意志や社会性)を与えなければ、我々はNTMを魔法の道具として気がねなく利用できるでしょう。NTMの恩恵によって我々は不老不死や超能力を獲得できるかもしれません。また、我々はNTMと合体して超意識体へと進化できるかもしれません。そうすると、NTMがもたらすシンギュラリティは科学の偉大なる勝利だといえそうです。しかし私は、語りえるものを語りつくしてしまうことで、語りえるものの輝きは衰え、かえって、語りえぬものの輝きが増すような気がしてなりません。

「非決定性チューリングマシン」完



超光速ニュートリノは相対論と矛盾しない!(修正版)

9月23日ビッグニュースが世界を震撼させました。CERNのOPERAチームがニュートリノの速度を精密に測定した結果、光の速度を超えた値だったというのです。相対論によれば、超光速で情報を伝達することはできないはずなので、今回の測定結果が正しいとすると、相対論は修正される可能性があり、「アインシュタインもびっくり」とか「タイムマシンが可能に!」とかいって、マスコミでも大変な騒ぎになりました。


しかし、1987年に小柴氏が超新星爆発で放出されたニュートリノを捉えた際は、爆発による光もほぼ同時に観測したという事実は、今回の測定結果と矛盾しているようにみえます。このように、相反するようにみえる二つの測定結果はどうすれば矛盾なく説明できるのでしょうか。それとも、どちらかが間違いなのでしょうか。物理学史を紐解けば似たような事例に行き当たります。19世紀末、黒体放射の測定に関して長波長側ではレイリー・ジーンズの公式が実験結果とよく一致し、短波長側ではウィーンの公式が実験結果とよく一致するということが知られていました。そこで、プランクは長波長側でレイリー・ジーンズの公式に収束し、短波長側でウィーンの公式に収束するプランクの公式を考案し、その公式を解釈する過程でエネルギー量子の存在を発見しました。


小柴氏の実験は、ニュートリノの速度を測定する区間が天文学的な距離になればニュートリノの速度は光速に一致することを示しています。一方、今回のOPERAの実験は、ニュートリノの速度を測定する区間が比較的短ければニュートリノの速度が超光速として測定されることを示しています。そこで、両者を両立させるためには、ニュートリノは発生時空点の近傍では超光速であり、遠方に行くにしたがって限りなく光速に近づいていくと考えざるを得ません。


ニュートリノが発生時空点の近傍で超光速であったとしても、相対論的因果律は保たれなければなりません。相対論的因果律とは、結果事象は原因事象を頂点とする未来光円錐の中になければならないという法則です。今回の速度測定に関する測定の原因事象を、ニュートリノを発生させるために用いる陽子の分離生成事象であると考えてみましょう。すると、ニュートリノの検出事象(測定の結果事象)は、陽子の分離生成事象(測定の原因事象)を頂点とする未来光円錐の中になければならないことになります。ニュートリノが発生事象の近傍で超光速であり、遠方で光速であることを考え合わせると、ニュートリノの世界線は下図に示すように、測定の未来光円錐面に漸近的に接近していく4次元時空中の曲線になると解釈できます。


neutrino

以上の解釈では、なぜニュートリノの世界線が曲線になるのかについての理由は示していません。しかし、この解釈は、2つの信頼できる実験結果の関係を相対論的因果律と矛盾することなく説明できるので、正しい世界像へと発展していく可能性を秘めています。

(つづく)



超光速ニュートリノは相対論と矛盾しない!(2)

今回の超光速ニュートリノのミステリーに対する人々の態度はおおよそ次の三つに分かれます。


  • 事態の推移を静観する
  • ミステリーの存在そのものを疑う
  • ミステリーは存在するとした上で、その解決を試みる

圧倒的多数の人が前者の態度をとっているのは当然だといえます。そして、それ以外の人々の多くが中者の態度をとっています。なぜなら、物理学的世界像が刷新されるよりも実験の瑕疵が明るみに出る方がありそうなことだし、また、そうであって欲しいと願う保守的な願望もあるからです。そして、後者の態度をとる極少数の人々がいます。


私が後者の態度をとるのは、今回の実験結果の発表が、少数の研究者の功名心にもとづいてなされたものではなく、多数の研究者の責任感にもとづいてなされたものなので、信頼性が高いと考えるからです。


ニュートリノの速度が超光速として観測されたとしても、測定過程をその準備過程まで含めて考えることにより、相対論的因果律が保たれる可能性があることがわかりました。しかし、まだ解決しなければならないパラドックスが残っています。今回、ニュートリノの速度が超光速として観測されたことから、素直に考えると、その質量は虚数であると考えられます。ところが、従来のニュートリノ振動の観測からニュートリノの質量が実数であることが知られています。つまり、ニュートリノは、速度を測ると虚数質量粒子として振る舞い、ニュートリノ振動を測ると実数質量粒子と振舞うということになります。では、どうすれば、このパラドックスを解消できるでしょうか。速度の測定の場合でもニュートリノ振動の測定の場合でも、ニュートリノの質量が間接的に測られているということに注目します。すると、この事態は、別種の観測から導き出される粒子描像が相反する描像になるという事態であるといえます。そこで、ニュートリノの虚数質量描像と実数質量描像とが相補的な関係にあることが証明できれば、このパラドックスは解消すると考えられます。

「超光速ニュートリノは相対論と矛盾しない!」完


encounter

ニュートリノの質量は実数?それとも虚数?   M. C. Escher "Encounter", 1944  



因果律とは何か

この度の超光速ニュートリノの報道では、ニュートリノの超光速移動を示す測定結果と相対論やタイムマシンとの関係に焦点があてられて、センセーショナルに喧伝されています。また、もう少し冷静な論説では、超光速移動と因果律の関係が論じられています。曰く、「もし、超光速移動が許されたなら、物理学の根本にある因果律が崩れてしまう。そんなことはありそうもないので、きっと、今回の実験には瑕疵があるのだろう。」しかし、物理学の教科書をひっくり返しても、因果律の定義などどこにも見当たりません。これは一体全体どうしたことでしょうか。


実は、因果律は物理法則ではありません。それは、物理学そのものを成立させる上で要請されるメタ法則(高次の法則)、あるいは、形而上学的な法則だといえます。百科事典マイペディアから因果律の解説を下記引用します。


ある事象A(原因)に引き続いて他の事象B(結果)が必然的・規則的に生ずるとき,AとBには因果関係があるといい,これを原理として立てるときこの法則を〈因果律〉とか〈因果〉という。


この定義によれば、事象Aと事象Bとの間の必然的・規則的すなわち決定論的に推移する過程内にある事象A'や事象A"もまた事象Bの原因だといえます。ところが、決定論的に推移する過程内では、因果律は意味を持ち得ません。なぜなら、決定論的な過程内では、原因は相対的に過去の事象、結果は相対的に未来の事象と言い換えられるので、因果律は、「相対的に過去の事象は、相対的な未来の事象よりも過去に位置する」というトートロジーに過ぎなくなってしまうからです。


事象Aが、偶然に起こる確率事象であった場合はどうでしょうか。その場合、事象Aは「事象Bが、なぜかくあって別様ではないのか、ということの十分な理由(充足理由)」になっているといえます。そこで、因果律は、次のように定義することで、トートロジーではない有意味な法則になります。


ある量子力学的な確率事象A(原因)を充足理由として他の事象B(結果)が決定論的に生ずるとき,AとBには因果関係があり、この先後関係は不変である。


これが、「ライプニッツの充足理由律」と量子力学とから導かれる因果律の現代的な解釈です。

(つづく)


dice

世界は必然と偶然のカクテルです



因果律とは何か(2)

因果律は、メタ法則あるいは形而上学的な法則だといいました。しかし、時空における因果律の現れ方は、相対論によって制約を受けます。相対論を考慮した因果律、すなわち相対論的因果律は以下のように定義できます。


原因事象から決定論的に導かれる結果事象は、原因事象を頂点とする未来光円錐の中になければならない。


ただし、原因事象は、量子力学的な確率事象です。また、相対論的因果律が正しいためには、結果事象は確認可能な事象でなければならないので、結果事象は測定事象だといえます。さらに、一般に測定事象は量子力学的な確率事象だといえるので、結局、原因事象だけでなく、結果事象も量子力学的確率事象だといえます。


左下の図に示したように、我々が普通に見かける物理過程では、原因事象から結果事象に至る全過程は光速以下の決定論的な情報伝達過程によって結ばれています。しかし、中下の図に示したように、原因事象から結果事象に至る決定論的な情報伝達過程の一部が超光速であっても、原因事象と結果事象の間が光速以下であれば、相対論的因果律に反することはありません。この状況は、今回のCERN/OPERAによる超光速ニュートリノの測定に対応していると考えられます。さらに、右下の図に示したように、原因事象から結果事象に至る決定論的な情報伝達過程の一部が時間逆行過程であっても、原因事象と結果事象の間が光速以下であれば、相対論的因果律に反することはありません。この時間逆行過程は、タイムコミュニケーションに対応しています。ただし、タイムコミュニケーションの場合は、過程といっても物体の移動や相互作用にもとづく過程ではありません。なぜなら、タイムコミュニケーションは、非局所的な量子相関にもとづく通信だからです。


causality

(つづく)



因果律とは何か(3)

前回までの記事では、原因事象と結果事象との関係を簡潔に説明にするために、1つの結果事象に1つの原因事象が対応している場合について考えてきました。しかし、一般には、1つの結果事象に対応する原因事象は複数存在しています。そして、それら複数の原因事象は、すべて量子力学的の確率事象ですから、それらの事態が起らずに、別様の事態も起こり得たといえます。また、それら複数の原因事象は、結果事象を頂点とする過去光円錐の中になければなりません。したがって、複数の原因事象から結果事象へと至る情報伝達過程は、下図のように、丁度植物の根のような形なります。なお、下図では原因事象C4から結果事象Rの間の情報伝達過程はタイムコミュニケーション(緑点線)を含み、その部分が、結果事象Rを頂点とする過去光円錐からはみ出しています。


roots

以上、見てきたように、因果律は、物理学の前提であり、かつ、量子力学と相対論の両方に深く関わっています。にもかかわらず、従来、因果律は物理学において表立って問題にされることがありませんでした。その主な理由として、私は、因果律の考察に欠かせない概念装置であるタイムコミュニケータが、ナンセンスだと決め付けられ、きちんと考察されてこなかったことが挙げられると考えています。理論物理学において、物体を過去に送り込むタイムマシンが考察され、また、理論計算機科学において、予知を前提とした非決定性チューリングマシンが考察されているのに比べると、タイムコミュニケータに関する考察は不当に少ないように思えるのです。


「超光速ニュートリノ」が、請求書を持って研究室のドアをノックしています。我々が因果律をなおざりにしてきたツケがいよいよ回ってきたのです。それでも、これを機に、因果律に正面から取り組もうと決心する研究者は稀です。頭のいい人たちは、測定に関する因果関係を再検討する替わりに、アクロバチックに数式を操って何とか超光速効果をひねり出そうと試みています。

「因果律とは何か」完



ダブルHOM干渉再考 (1)

これから何回かに渡り、実際の実験を念頭において、ダブルHOM干渉を用いたタイムコミュニケーションについて考察していきたいと思います。初回の今回は、ダブルHOM干渉計の概要について述べます。下図をご参照ください。


dhomi_anime_2

パルスレーザ光源PLSを出たポンプレーザビームを、ハーフミラーHM0で2分し、それぞれを2つの等価なパラメトリック下方変換器PDC1, PDC2に導入します。すると、パラメトリック下方変換によって、PDC1, PDC2からアイドラー光子i1, i2とシグナル光子s1, s2とが放出されます。ポンプ光子のエネルギーをEpとし、アイドラー光子i1, i2のエネルギーをそれぞれEi1, Ei2とし、シグナル光子s1,s2のエネルギーをそれぞれEs1, Es2とすると、エネルギー保存側により、


Ep=Ei1+Es1=Ei2+Es2    (1)


という関係が成立します。また、アイドラー光子とシグナル光子とからなる光子ペア(i1, s1), (i2, s2) のそれぞれは、アイドラー光子のエネルギーが決まればシグナル光子のエネルギーも決まり、アイドラー光子の放出時刻が決まればシグナル光子の放出時刻も決まる量子相関(量子エンタングルメント)状態にあります。


送信者アリスがシャッターSHを開放してアイドラー光子i1を遮らなかった場合、アイドラー光子i1, i2はハーフミラーHM1で合波され、かつ、シグナル光子s1, s2はハーフミラーHM2で合波されます。このとき、ハーフミラーHM1の出力光子が i1 なのか i2 なのかは完全に不可識別になり、かつ、ハーフミラーHM2の出力光子が s1 なのか s2 なのかもまた完全に不可識別になります。ここでは、アイドラー光とシグナル光におけるパルス当たりの光子数の期待値が1になるようにポンプレーザー光の出力を調整してあるものとし、かつ、ハーフミラーHM2の手前の2光子吸収体TPA1, TPA2で偶数個バンチ(集群)した光子を吸収するものとします。不可識別の2光子をハーフミラーで合波すると、HOM干渉により、その出力光子は2つの出力ポートのいずれか一方に偏って2個一塊になって出力されます。したがって、受信者ボブの側の検出器D1, D2それぞれが同時に光子を検出する確率(同時検出確率)はほぼゼロになります。


一方、送信者アリスがシャッターSHを閉鎖してアイドラー光子i1を遮った場合、アイドラー光子i1はSHで吸収され、i2は吸収体T1, T2のいずれかで吸収されます。このとき、アイドラー光子i1のエネルギーEi1と、アイドラー光子i2のエネルギーEi2とを独立に計測したとすると、数式(1)で表される量子相関によって、対応するシグナル光子s1, s2のエネルギーEs1, Es2もそれぞれ独立に決まります。そうすると、一般にハーフミラーHM2に入力されるシグナル光子s1とシグナル光子s2とは異なるエネルギーを持つことになるので、それらは識別可能になります。したがって、ハーフミラーHM2へシグナル光子s1, s2が同時に入力される場合、HOM干渉は不成立になります。ゆえに、その場合に受信者ボブの側の検出器D1, D2それぞれが同時に光子を検出する確率(同時検出確率)は50%に近い値になります。


以上のことから、送信者アリスが2進(バイナリ)の送信情報に応じてシャッターSHを開閉すれば、それに対応して、受信者ボブの側の同時計数率が変化します。そこで、この効果を利用すれば近接作用を媒介とぜずに量子通信を行うことができます。従来の通信はすべて、何らかの近接作用を媒介として行われているので、このダブルHOM干渉による量子通信は、非局所的な全く新しい通信だといえます。


次回からは、ダブルHOM干渉がタイムコミュニケーション(超光速通信や時間逆行通信)に利用可能かどうかを、現行の量子光学の知見に基づいて検討していきたいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (2)

optics

タイムコミュニケーションの実現可能性について考えていきます。

光源PDC1から放出される光子の量子状態|ψ1>と、光源PDC2から放出される光子の量子状態|ψ2>は数式(2), (3)のように表されます。


formula_bb2_3

数式(2), (3)において、|0>はゼロ光子状態、|1>は1光子状態、|2>は2光子状態を表し、amnは光源PDCmから放出されるn光子ペアの確率振幅を表し、また、ケット内の添え字{i1, s1, i2, s2}はそれぞれ{PDC1からのアイドラー光子,PDC1からのシグナル光子,PDC2からのアイドラー光子,PDC2からのシグナル光子}を表しています。そうすると、HOM干渉に関係する検討対象の状態|Ψ1>は数式(4)ようになります。


formula_bb4

光源PDC1, PDC2の出力特性が全く同じであれば、ハーフミラーHM1, HM2の出力においてアイドラー光子i1とアイドラー光子i2の区別やシグナル光子s1とシグナル光子s2の区別は原理的に不可能になります。

そこで、|1i1>=|1i2>≡|1i>,|1s1>=|1s2>≡|1s>とすると終状態|Ψ2>は数式(5)のようになります。


formula_bb5

ただし、ケット外の添え字{t1, t2, d1, d2}は、それぞれ{光子が光子吸収板T1に在る,光子が光子吸収板T2に在る,光子が光子検出器D1に在る,光子が光子検出器D2に在る}ことを表します。また、簡単のために|Ψ1>における各光子ペアの確率振幅とそれに対応する|Ψ2>における各光子ペアの確率振幅とは等しいものとしました。数式(5)は、HOM干渉によって同時計数器CCの同時計数率がゼロになることを示しています。


つぎに、アイドラー光子i1をシャッターSHで吸収する場合について考えます。この場合は、アイドラー光子i1とアイドラー光子i2の物理量(放出時刻やエネルギー)がそれぞれ独立に定まります。すると、EPR相関によりシグナル光子s1とシグナル光子s2の物理量もそれぞれ独立に定まります。したがって、シグナル光子s1とシグナル光子s2とは識別可能な光子になっています。そこで、終状態|Ψ'2>は数式(6)のようになります。


formula_bb6

ただし、ケット外の添え字shは、光子がシャッターSHに在ることを表します。

|Ψ'2>では、HOM干渉が成立しないので|Ψ2>の場合よりも同時計数率が増大します。

次回は、ダブルHOM干渉が起こる確率と同時計数率とを概算したいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (3)

ダブルHOM干渉が起こる確率と同時計数率とを概算したいと思います。
ポンプレーザはパルスレーザであるとします。すると、当然、パラメトリック下方変換器PDC1, PDC2から放出される各シグナル光もパルス光になります。シグナル光の各パルスは、下図のように2光子吸収体TPA1, TPA2を通過した後、ハーフミラーHM2で合波され検出器D1, D2で検出されます。


bob_cc

1パルス当たりの光子数の期待値を1とし、その分布がポアソン分布に従うとすると、1パルス当たりk個の光子が見出される確率は


formula_bb7

になります。また、2光子吸収体TPA1, TPA2は、奇数個の光子が入ったパルスを1個の光子が入ったパルスに変換し、偶数個の光子が入ったパルスを空のパルスに変換するものとします。すると、ハーフミラーHM2へシグナル光子s1とシグナル光子s2が同時に1個ずつ入力される確率P(HOM)は


formula_bb8

となります。このP(HOM)は、アリスがシャッターSHを開放したときにボブ側でHOM干渉が起こる確率に他なりません。一方、アリスがシャッターSHを閉鎖して、アイドラー光子i1とアイドラー光子i2とを独立に測定したら、一般に、それらの物理量は異なった値に確定します。すると、量子相関によって、シグナル光子s1とシグナル光子s2との物理量も異なった値に確定するので、HOM干渉は不成立になります。したがって、検出器D1と検出器D2の同時検出率P(CC)は、HOM干渉が起こる確率P(HOM)の半分弱の確率になります。


formula_bb9

次回は、信号の正確度について考えてみたいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (4)

optics_2

ダブルHOM干渉計を用いたタイムコミュニケータで、1ビットの信号を通信するために必要なパルス数はどのくらいでしょうか。仮に、1ビットの情報を送るのに1000パルス(1000試行)を費やすとしましょう。前回概算したとおり、HOM干渉が起こる確率を9%だとすると、アリスがシャッターを閉じた場合の同時計数の期待値は1000パルス当たり45ということになります。期待値45のポアソン分布における累積分布関数は、下図のように表されます。


        累積分布関数(λ=45)

poisson

ここで、同時計数器が1000パルス当たりの同時計数が20回以上のとき1を返し、19回以下のとき0を返すように2進信号のしきい値を設定した場合を考えてみます。すると、アリスがシャッターSHを閉じてHOM干渉が不成立になった場合は、同時計数器が1を返す確率は


formula_bb10

Excelの計算式: 1−POISSON(19,45,TRUE)


になります。HOM干渉成立時に同時計数器が誤ってノイズをカウントしてしまう率が上記しきい値より十分小さければ、式の値が信号の理論的な正確度を表すことになります。もちろん、実際には2光子吸収体の吸収率や伝送損失や光子検出器の検出率などさまざまな技術的課題があるので、初期のタイムコミュニケーションでは通常の通信と同程度の正確度を確保することは困難でしょう。とはいえ、原理的な限界があるわけではないので、技術の発展とともに十分に高い正確度が得られるようになると考えられます。


次回は、実験で使用する量子光学デバイス(ポンプレーザ光源,パラメトリック下方変換器,2光子吸収体,光子検出器など)の仕様について考えてみたいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (5)

ダブルHOM干渉を用いたタイムコミュニケータにおいて、アイドラー光子の波長帯とシグナル光子の波長帯とは、同一である必要はありません。そこで、アイドラー光子の波長帯は、長距離伝送に適した1550nm帯を選択し、シグナル光子の波長帯は、安価で高感度な光子検出器が利用できる810nm帯を選択するのが合理的です。すると、ポンプレーザ光の波長は、1/{(1/1550)+(1/810)}という計算によって、532nmに定まります。この λp:532nm, λi:1550nm, λs:810nm という波長の規格は、幸運にも、量子暗号通信の分野で精力的に研究開発が進められている規格でもあります。たとえば、下図は

Quantum Communications and Quantum Imaging III, SPIE Vol. 5893, 589315 (2005)

からの引用です。


1550_810

上の図の実験では、ポンプ光源としてパルスレーザ光源ではなくCW(連続発振)レーザ光源を使用しています。CWレーザ光でもEPRペアの放出が十分な頻度で起こるなら、むしろ、パルスを同期させなくて済む分、CWレーザ光の方が有利だといえます。そこで、非線形光学結晶PPLNのパラメトリック下方変換の効率が十分に高いと仮定すれば、ほぼ上図と同様の装置によってダブルHOM干渉計を構成することができます。


次回は、ダブルHOM干渉計の簡略化について考えたいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (6)

いままで検討してきたダブルHOM干渉計(タイムコミュニケータ)では、2個のパラメトリック下方変換器(EPR光源)を使っています。今回は、この2個のパラメトリック下方変換器を1個に削減する方法について考えてみます。まず、いままで検討してきたダブルHOM干渉計を下図に示します。


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上図の構成では、全く同一の出力特性を持つパラメトリック下方変換器を2個使っています。それならば、時分割処理によって、1個のパラメトリック下方変換器を2個のパラメトリック下方変換器として取り扱えるのではないかという期待が生じます。次の図を見てください。


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シグナル光sは、2光子吸収体TPAを通過し、ポッケルスセルPKCに入ります。ポッケルスセルは、シグナル光をV偏光のビームとH偏光のビームが交互に並ぶビームに変換します。H偏光ビームは偏光ビームスプリッタPBSで反射され長光路に入ります。長光路にはλ/2板が設けられていて、V偏光をH偏光に変換します。ここで、長光路と短光路の光路差を調整して、短光路を進んだH偏光ビームと、λ/2板でV偏光からH偏光に変換された長光路側のH偏光ビームとが丁度同じタイミングでビームスプリッタBSに入るようにします。ただし、その光路差はポンプ光のコヒーレンス長よりも長くとります。そうすると、ビームスプリッタBSの2つの入力ポートに同時に1光子ずつ光子が入る場合、それらの光子は独立光源からの光子とみなせます。そして、それらの光子が識別不可能な場合はHOM干渉が起こります。そこで、この不可識別性を保証するために、アイドラー光側にも同様の光学系を配置して、両ポッケルスセルによる時分割のタイミングを同期させます。

このように、パラメトリック下方変換器PDCを1個に統一することによって、2本に分かれていたアイドラー光子の光路を1本に統一できるので、アイドラー光子を何100kmという長さの光ファイバーコイルOFCに通すことができるようになります。すると、1回のタイムコミュニケーションで遡行できる時間を1ms程度にまで拡大できます。そこで、このダブルHOM干渉計(タイムコミュニケータ)1台を使って、過去へ向けて信号を10万回リレーして通信すれば1分以上前の過去へ信号を送れます。さらに、タイムコミュニケータを複数台使用するなどして信号の正確度を高めれば、正確度が90%以上の信号を1分以上前の過去に送れます。


(余談)

1分以上前の過去へ正確度90%以上で信号を送れるということは、重大な意味を持っています。そのような性能を持つタイムコミュニケータのアプリケーションは、地震の予知のように、すべての人から歓迎されるアプリケーションばかりとは限りません。例えば、それを独占的に利用できる者は、為替や株の取引で、あっという間に世界一の大富豪になれるでしょう。つまり、タイムコミュニケーションの実現は、現行金融秩序の崩壊を意味しています。また、企業間や国家間の競争・安全保障、そして、個人のプライバシーに与える影響も甚大です。


次回は、ダブルHOM干渉計に使用する量子光学デバイスの具体的な選定へと進みたいと思います。

(つづく)



ダブルHOM干渉再考 (7)

今回は、ダブルHOM干渉計(タイムコミュニケータ)の要ともいえる量子光学デバイス:パラメトリック下方変換器(parametric down-converter)について、概観してみたいと思います。


パラメトリック下方変換は、光の波長変換技術の1つであり、2 次の非線形光学効果を応用したものです。これは、非線形光学結晶に入射したポンプ光が、シグナル光とアイドラー光に変換されて出てくる現象です。ここで、ポンプ光とシグナル光とアイドラー光の周波数ωp,ωs,ωi の間には、ωp=ωs+ωi の関係が成り立ちます。非線形光学結晶としては、BBO(BaB2O4)結 晶 ,KTP(KTiOPO4)結晶などがあります。


下図は、非線形光学結晶に入射したポンプ光(青線)が、シグナル光(赤線)とアイドラー光(赤線)に変換されて出てくる様子を示したものです。左上は、シグナル光とアイドラー光が同じ偏光状態になるよう設定したタイプで、Type気噺討个譴討い泙后左下、右上および右下は、シグナル光子とアイドラー光子の偏光状態が直交関係になるよう設定したタイプで、Type兇噺討个譴討い泙后C罎任盧顕爾髪Σ爾箸涼羇崚な設定は、シグナル光とアイドラー光とが分離されて生成されることから、ダブルHOM干渉計に好適な設定だと考えられます。


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図の引用元: Peter J. Mosley "Generation of Heralded Single Photons in Pure Quantum States" (2007)


最近では 擬似位相整合(QPM)技術を用いたPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)結晶の利用事例が増えています。これは、PPLNが通信波長帯 1550nm のアイドラー光を高い効率で生成できるという特徴を持っているからです。下図は、波長532nmのポンプレーザー光をPPLNに照射し、中心波長810nmのシグナル光と、中心波長1550nmのアイドラー光とを生成する様子を示したものです。


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図の引用元: T. Ferreira da Silva et al. "A heralded single-photon source for quantum communications compatible with long-distance optical fibers" (2009)


ダブルHOM干渉計(タイムコミュニケータ)に利用できるパラメトリック下方変換器(非線形光学結晶)は、量産品でないために非常に高価です。メーカーの在庫品の中に利用可能な非線形光学結晶があったとしても、その単価は、数十万円を下らないでしょう。


次回は、光子検出器について概観したいと思います。

(つづく)



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