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新しい世界像/1.ドグマからの脱却

Galileo

Galileo Galilei (1564-1642)


「自然という書物は数学の言葉で書かれている」というガリレオのドグマは、最初から万人に受け入れられたわけではありません。ガリレオの死から4年後に生まれたゴットフリート・ライプニッツは、物理的世界には数学的な必然的真理(理性の真理)だけでなく物理世界特有の偶然的真理(事実の真理)が存在することを強調しました。さらに、ライプニッツの死から8年後に生まれたイマヌエル・カントは自然の決定論的因果性を超える自由の事実(ライプニッツのいう〈事実の真理〉)の存在を認め,これを神,不死とならんぶ道徳のための要請としました。とはいえ、ガリレオのドグマを思想的基盤とするニュートン力学がもたらした科学技術の目覚ましい発展(科学革命)の前にライプニッツやカントらが描いた非決定論的な世界像は次第に色あせ科学的な世界像として顧みられなくなっていきました。


神聖なガリレオのドグマに最初に動揺を与えたのは、自然現象が本質的に不可逆であることを保証する熱力学第二法則の発見でした。もし、ガリレオのドグマが正しくて自然現象が決定論的な(時間反転に対して不変な)方程式によって十全に記述できるなら、自然現象は本質的に可逆なはずです。ところが我々の肉体を含め身の回りの多くの物事は不可逆に変化していきます。例えば、グラスに浮かべた氷はやがて溶けますが、水が自然に氷と温水に分かれることはありません。熱力学的な不可逆性は、現象の先後関係を規定しています。そして、先後とは観測者の意識そのものです。つまり、熱力学第二法則の発見は、物理世界が人間の意識とは無関係に存在し決定論的に記述できるというガリレオやデカルトやニュートンらによる世界観に疑問を投げかけました。


量子力学の登場によって、ガリレオのドグマはいよいよ窮地に追い込まれました。量子力学の確率解釈によれば、量子的粒子に関する測定値は本質的な意味で確率的にしか予測できません。たとえば、1個の光子がビームスプリッタを透過して観測されるかそれとも反射して観測されるかは本質的な意味で確率的であって、予めどちらかに決定していたとはいえません。それでも決定論にしがみつこうとするなら、量子測定の測定値の分散に対応する多世界が存在し、それぞれの世界の観測者が異なる測定値を観測するという多世界解釈を受け入れざるをえません。しかし、我々が経験できる現実の物理世界はユニークな歴史を持つユニークな世界です。ですから、多世界解釈は現実に即した解釈ではなく、ガリレオのドグマ(決定論的世界観)を救うという不純な動機にもとづく意図的・虚構的な解釈だといわざるをえません。


近年における人工知能技術や脳科学の急速な発展は、心の哲学を科学の前面へと押し出しました。いままさに、意識や自由意志といった主観的な概念を扱える科学の新しい世界像が強く要請されています。仮想的なガリレオのドグマから脱却し、非決定論的に発展する現実の物理世界において観測者(いまここの私、実存)がどのような地位を占めるのかを明確にすべき時が来たのです。



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