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「私」と「他者」と「物理世界」 (15)

neumann test_anime

John von Neumann and the EDVAC


フォン・ノイマンの射影仮説(射影公準)とは次のような規則である(1)


・ 状態|ψ>にある系は、物理量Aの測定後、得られた測定値aiに対応する固有状態|ai>となる。


この射影仮説には次の2つの役割がある(2)


(A) 異なる測定値に対応する量子状態の間の干渉をなくす
(B) 干渉のなくなった複数の量子状態の中からどれか一つを選び出す


上記のうち(B)は、次の反復仮説とよばれる経験則を根拠としている(3)


・ 物理量Aを測定して測定値aiを得た直後に、Aを測定するならば、確率1で同じ測定値aiが測定される


つまり、測定直後の量子系の状態がその測定値に対応する固有状態になっている((B)が成立している)からこそ、測定を反復すると確率1で同じ測定値が得らるというわけである。逆にいえば、反復仮説に反する事実を示すことができれば射影仮説はその根拠を失う。


実存主義的様相解釈は、反復仮説に反する状況を予想する。
具体例として図24に示したように、1個の光子が透過軸0°の第1偏光板P1hを透過(非吸収)したことにより水平偏光という値が記録された直後に、その光子が透過軸90°の第2偏光板P2vに入射した場合を考える。

fig24

もし反復仮説が正しいなら、その光子は確率1で第2偏光板P2vに吸収されることによって水平偏光という値が記録される。したがって、検出器D1での光子検出確率はゼロになる。この反復仮説にもとづく見解は、我々の常識(:2枚の偏光板の透過軸を直交させると光が遮られる)とも合致している。
しかし、すでに第7節で述べたとおり、実存主義的様相解釈の立場に立つと、その光子が第2偏光板P2vを有意な確率で透過して検出器D1で検出される状況が想定できる。図25はその状況を示したミンコフスキー時空図である。

fig25

光子が第1偏光板P1hを透過する時点では、第2偏光板P2の透過軸角度はまだ決まっておらず、90°に設定される確率と45°に設定される確率とがそれぞれ50%だとする。すると、第1の偏光板P1h透過時点から記録光円錐面C_v_set_sまでの光子の偏光状態は、±45記録基底混合状態とHV記録基底混合状態とからなる複合的な記録基底混合状態になる。このとき、|+45>,|-45>,|H>,|V>それぞれの確率はボルンの規則によって以下のように割り当てられる。


《P1h〜C_v_set_s》
±45記録基底混合状態の確率 = 50%
∴|+45>の確率 = 25%, |-45>の確率 = 25%
HV記録基底混合状態の確率 = 50%
∴|H>の確率 = 50%, |V>の確率 = 0%


そして、透過軸角度を90°に設定することを確定する究極的な原因事象C_v_setを頂点とする記録光円錐面C_v_set_sを境界として、第2偏光板P2の透過軸角度が90°に設定される確率は100%へと変化する。その場合、記録光円錐面C_v_set_sを境界面として光子の状態はHV記録基底混合状態へと様相遷移する。このとき、|H>,|V>それぞれの確率はボルンの規則によって以下のように割り当てられる。


《C_v_set_s〜P2v》
|H>の確率 = 75%
|V>の確率 = 25%


したがって、光子は確率25%で第2偏光板P2vを透過し検出器D1で検出される。


下記の表1は、コペンハーゲン解釈と実存主義的様相解釈の原理的要素を比較したものである。実存主義的様相解釈では、量子系の一般的な状態を記録基底混合状態として捉える。というのは、通常、量子系の物理量の値が環境中で記録される可能性はゼロでないから、記録可能性の非存在を前提とした純粋状態よりも、記録可能性の存在を前提とした記録基底混合状態を量子系の一般的な状態として捉える方が自然だからである。また、実存主義的様相解釈では、波束の収縮を記録光円錐面における様相遷移として捉える。そのため、波束の収縮は単に当該記録対象系の波束の収縮であるに留まらず、当該記録事象を究極的な原因事象として記録基底が設定される別途記録対象系に様相遷移をもたらす。さらに、実存主義的様相解釈では、ボルンの規則を記録光円錐面で起こる様相遷移に関する確率規則として捉える。

table1

現時点における実存主義的様相解釈の最大の強みは、実験による検証(実証または反証)が可能だという点にある。したがって、現段階では、実存主義的様相解釈の理論体系の整備に拘らず、その検証実験の企画・実行に専念するのが得策である。


参考文献
(1) 白井仁人他,「量子という謎/量子力学の哲学入門」,勁草書房,2012年.
(2) 清水明,Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications.
(3) 木村元,「量子情報科学ウィンタースクール2010」.

(つづく)


お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


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