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「私」と「他者」と「物理世界」 (14)

born test_anime

Max Born


「ボルンの規則は、量子力学の法則で、量子系についてある物理量(オブザーバブル)を測定したとき、ある値が得られる確率を与える。(ウィキペディア/2014)」
上記の説明だけでは、ボルンの規則が量子系の時間発展に適用される一般的な法則なのか、それとも、測定過程に限定される特殊な規則なのかが曖昧である。ボルンの規則が物理法則であるなら、後者ではなく、前者であろう。


測定や観測可能量(オブザーバブル)という用語は、観測者や操作者の意識や意志と親和性があるため、このような用語を用いてボルンの規則を表現すると、ボルンの規則があたかも観測者や操作者が介入したときに限定的に適用される規則であるかのような印象が生じる。
そこで、測定というかわりに記録といい、観測可能量(オブザーバブル)というかわりに記録可能量(レコーダブル)ということにより、ボルンの規則を一般の記録対象系の時間発展に適用される法則として捉えることにする。


透過軸+45°の第1偏光板を透過することにより、その透過時点に+45°偏光状態であることが記録された光子を、透過軸0°の第2偏光板に入射させる場合について考える。
コペンハーゲン解釈は、第1偏光板を透過した直後から第2偏光板に入射する直前までの光子の状態が純粋状態|+45>になっていると主張する(:射影仮説)。そして、光子が第2偏光板に入射した時点で、ボルンの規則が適用されて水平偏光あるいは垂直偏光という値がそれぞれ50%の確率で記録(測定)されると主張する。つまり、コペンハーゲン解釈は射影仮説とボルンの規則に基づいているといえる。


もし、ボルンの規則を記録対象系の状態遷移の規則だと捉えるなら、上記の例のように第1偏光板で純粋状態|+45> = (1/√2)|H> + (1/√2)|V>として記録された系は、第2偏光板で記録される前の段階でボルンの規則に従って|H>である確率と|V>である確率とがそれぞれ50%の混合状態へと遷移するということになる。しかし、光子到達時点の第2偏光板の設定に応じて、到達前の光子の状態が純粋状態から混合状態へと遷移するという事態は逆因果的で可笑しい。また、仮に逆因果的な効果があるとしても、その効果がどの時点にどのような形でもたらされるのかも不明である。


記録時の記録装置(非人工物であってよい)の設定と記録前の記録対象系の状態遷移との因果関係に関するパラドックスを回避し、記録対象系の状態遷移をローレンツ不変な形に記述するためには、「ボルンの規則は記録基底の設定可能性の変化に即して適用される」と考える以外にない。以下その理由を説明する。


記録装置の設定にはその設定を確定した原因が必ず存在する。
そして、その原因がそれ以上遡ることのできない原因であればそれは究極的な原因だといえる。
それ以上遡ることができないとは、決定論的に遡及できないということである。
決定論的に遡及できないとは、非決定論的な事象によって遡及が断ち切られているということである。
非決定論的な事象とは本源的な確率事象である。
本源的な確率事象とは量子力学的な確率事象である。
量子力学的な確率事象とは何らかの量子記録事象である。
つまり、別途量子記録事象を究極的な原因事象として、当該記録装置の設定が確定する。
または、別途量子記録事象を究極的な原因事象として、当該記録装置の設定の可能性が限定される。
当該記録装置の設定が確定した時空領域では、必ず、その記録装置の記録基底に関する記録が行われるのだから、その時空領域における記録対象系の状態はその記録基底に関する混合状態(記録基底混合状態)だと考えてよい。
同様に、当該記録装置の設定の可能性が限定された時空領域では、必ず、その記録装置の記録基底の可能性に関する記録が行われるのだから、その時空領域における記録対象系の状態はその記録基底の可能性に関する記録基底混合状態だと考えてよい。
当該記録装置の設定が確定した時空領域や当該記録装置の設定の可能性が限定された時空領域とは、その究極的な原因事象である別途量子記録事象を頂点とする未来光円錐(記録光円錐)の内側の時空領域である。
したがって、ボルンの規則とは「当該記録装置の設定に関する究極的な原因事象である別途量子記録事象」を頂点とする記録光円錐面で起こる当該記録対象系の状態遷移に関する規則である(:実存主義的様相解釈)。そして、その遷移が光円錐面で起こるがゆえに、ボルンの規則は因果律と無矛盾であり、かつ、ローレンツ不変である。


すでに、我々はエリツール・ベイドマンの爆弾検査問題やEPR相関といった非力学的な状態遷移や非局所的な状態遷移を事実として承認している。だから、実存主義的様相解釈が非力学的かつ非局所的な遷移(様相遷移)を要請しても少しも不思議なことではない。
また、ボルンの規則が、一般の量子系の時間発展に適用される法則だからといって、実存とは無縁の法則だというわけではない。なぜなら、ボルンの規則に従って非決定論的に積み重ねられた記録、すなわち、「かくあって別様ではない歴史」を内包する過去光円錐の頂点に私のいまここが位置するからである。畢竟、ボルンの規則は私(観測主体)のいまここという視座において語られる法則なのである。

(つづく)


お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


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