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「私」と「他者」と「物理世界」 (9)

hokusai_dragon test_anime

葛飾北斎「龍図」


実存主義的様相解釈は、Dragonを覆った霧を吹き払う。


コペンハーゲン解釈と多世界解釈のどちらにも精通していたジョン・ホイーラーは、彼の有名な思考実験「遅延選択実験」を通じて、従来解釈では説明できない状態遷移(Great Smoky Dragon)への注意を喚起した。

fig11

図11(a)に示したようにマッハツェンダー干渉計(以下MZ干渉計という)に光子1個を入力した場合、左光路と右光路の光路差をゼロにすれば、干渉によって検出器D1で光子が検出される確率はゼロになる。一方、図11(b)に示したように、ビームスプリッタBS2を光路から外し、かつ、検出器D1が光子を検出した場合、光子は右光路を通ってきたと推測できる。他方、図11(c)に示したように、ビームスプリッタBS2を経路から外し、かつ、検出器D2が光子を検出た場合、光子は左光路を通ってきたと推測できる。そこで、MZ干渉計内に光子が存在する時間帯にビームスプリッタBS2の抜き差しを選択したら、MZ干渉計内の光子が左光路状態と右光路状態の重ね合わせとしての純粋状態であったのか、それとも左光路状態の確率50%,右光路状態の確率50%の混合状態であったのかが、事後的な選択(遅延選択)に対応するということになる。しかし、従来解釈は「MZ干渉計内の光子がどのような過程を経てビームスプリッタBS2の設定に対応する状態へと遷移するのか」という疑問に全く答えていない。ホイーラーはP.C.W.デイヴィスのインタビューで次のように述べている。


(引用開始)
はっきり思い描くことのできることは、実際、「霧中の竜王(Great Smoky Dragon)」のようなものです。竜の尾は鋭くはっきりしています。それは光子が器具の中に入って半透明鏡を通過するときです。竜の口はきわめて明白です。それは光子が一方あるいは他方の検出器に達したときです。しかしその間は、それが存在するという権利はありません。
(引用終了)P.C.W.デイヴィス他編、出口修至訳「量子と混沌」より


遅延選択実験に関する従来の考察には、重大な欠陥がある。すなわち、従来の考察は遅延選択(実験装置の設定)の究極的な原因となる事象がいつどこで起こったのかについて全く考慮していない。


遅延選択の究極的な原因となる事象を明確にするために、実験系に1個の電子のスピンを記録するシュテルンゲルラッハ装置を追加し、スピンダウンが記録されたらビームスプリッタBS2を光路に挿入し、スピンアップが記録されたらビームスプリッタBS2を光路から外すことにする。ただし、スピンダウンとスピンアップの確率は半々になるように予め設定しておく。

なお、以下に示すミンコフスキー時空図上では、MZ干渉計を2次元時空上に表現するために、図11を縦方向に収縮させた1次元のMZ干渉計について考察する。こうすれば、光子の世界線を光路に見立てることによって、2次元時空上にMZ干渉計を表現できるので大変都合が良い。

fig12

図12では、光子がビームスプリッタBS1を通過する時空点は、スピンダウンの記録事象R_downを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光子が左右どちらの光路にあるかについて記録される可能性は全くない。
そこで、実存主義的様相解釈では、ビームスプリッタBS1からビームスプリッタBS2までの光子の光路状態は、


(1/√2)|左光路> + (1/√2)|右光路>


という純粋状態であると解釈する。

fig13

一方、図13では、光子がビームスプリッタBS1を通過する時空点は、スピンアップの記録事象R_upを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光子はビームスプリッタBS1を出力した直後から、50%の確率で左光路状態と記録され、50%の確率で右光路状態と記録されることが確定している。
そこで、実存主義的様相解釈では、ビームスプリッタBS1から検出器D1,D2までの光子の状態は、


|左光路>の確率 = 50%
|右光路>の確率 = 50%


という記録基底混合状態であると解釈する。

(つづく)


お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


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