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「私」と「他者」と「物理世界」

bond_of_union

MC Escher . Bond of Union, 1956.


「私の世界」には、「私」と「他者」が存在しなければならない。 そして、「私」と「他者」との関係性は、「物理世界」において示される。


「主観的な私」が「物理世界」へ射影されて「客観的な私」が構成されるように、 「主観的な他者」が「物理世界」へ射影されて「客観的な他者」が構成される。


まず「物理世界」があって、そこから「私」や「他者」が生じるのではない。 「物理世界」は、「私」と「他者」との関係性を示す「私の世界の一側面」にすぎない。


「物理世界」は「私」や「他者」の実存を前提とした世界である。 唯物的な現行の物理学は、近い将来、実存を中心に据えた形に書き換えられるに違いない。


(つづく)


お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


「私」と「他者」と「物理世界」 (2)

chirico

de Chirico. Hector and Andromache


「私」や「他者」は、どのように「物理世界」へ描き込まれるのか。


われわれの「物理世界」は、「かくあって別様ではない歴史」を持つユニークな世界である。
この「かくあって別様ではない歴史」を内包する過去光円錐の頂点に、「私」の「いまここ」がある。
「客観的な私」とは、「いまここ」を頂点とする過去光円錐内にある「歴史としての私」と未来光円錐内にある「可能性としての私」との総体を指す。

fig1

「客観的な私」に対応して「主観的な私(私の意識)」が存在するように、
「客観的な他者」に対応して「主観的な他者(他者の意識)」が存在する(あるいはその存在が想定される)。

fig2

「客観的な私」と「客観的な他者」との関係性は、通信によって規定される。
「あなた」とは、「いまここの私」と通信状態にある「客観的な他者」である。
「彼,彼女」とは、「いまここの私」と通信状態にない「客観的な他者」である。

fig3

(つづく)

お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


「私」と「他者」と「物理世界」 (3)

kenji

宮沢賢治「月夜のでんしんばしら」


「私」と「あなた」とは通信によって結ばれている。
その通信環境が「時空」であり、その通信媒体が「物」である。
「物」が通信媒体であるということは、それが送信における「操作」や受信における「観測」の対象だということである。


「操作」とは、主観的には操作者の意志を具現する能動的な行為であるが、客観的には操作系における確率的な自然現象である。
「観測」とは、主観的には観測者の意識を惹起する受動的な行為であるが、客観的には観測系における確率的な自然現象である。


そこで、一見すると「操作」や「観測」や「通信」は、それらの系における確率的な自然現象として首尾一貫した形で唯物論的に記述できるように見える。
だがしかし、そもそも確率は、可能性に関する様相概念、すなわち、何が現実で何が可能性なのかを規定している「私」や「他者」の実存を前提とした非唯物論的な概念である。

したがって、自然現象が確率的な現象である限り、「操作」も「観測」も「通信」も首尾一貫した形で唯物論的に記述することは不可能である。

いやむしろ、「物理世界」が「私」や「他者」の実存を前提とした非唯物論的な世界だからこそ、自然現象(量子現象)は、近似的にではなく、本源的に確率的なのである。

(つづく)


お願い

以上の記事は、哲学系掲示板「論客コミュニティー」に投稿したものです。投稿先への礼儀と応答の重複を避ける観点から、この記事へのコメントは、「論客コミュニティー/哲学/「私」と「他者」と「物理世界」」の方にお寄せ願います。


「私」と「他者」と「物理世界」 (4)

kandinsky

Vasily Kandinsky, Several Circles


かくあって別様ではない「我々の歴史」は、予め数学的に決定されていた約束事ではない。
素朴実在論にもとづく決定論は、間違いである。
また、量子力学の多世界解釈にもとづく決定論は、かくあって別様ではない「我々の歴史」という現実から目を背けた欺瞞にすぎない。


歴史とは、予め数学的に決定されていた約束事ではなく、本源的な確率事象によって非決定論的に形成されていく事態の記録である。


量子現象記録体(非人工物でよい)に記録される本源的な確率事象Cnをミンコフスキー時空図上に図示すれば、本源的な確率事象Cnを頂点とする未来光円錐の超円錐面を境界として、歴史が非決定論的に形成されていくという描像が得られる。

fig4

したがって、量子現象記録体に記録される本源的な確率事象は、歴史形成にかかわる究極的な原因事象である。


結局、我々のかくあって別様ではない歴史は、量子現象記録体に記録される確率事象を究極的な原因事象として、非決定論的に形成されていく事態の記録に他ならない。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (5)

archaeopteryx

現実世界は歴史世界である


量子現象記録体によって記録されることが確定している対象系の状態は、その記録基底に関する混合状態(以下、記録基底混合状態という)である。
たとえば、水平偏光光子だけを透すH偏光板によって偏光状態を記録されることが確定している1個の光子の状態は、HV記録基底に関する記録基底混合状態である。
この記録基底混合状態は、密度行列によって表される量子的混合状態とは異なり、純粋状態への分解の仕方が記録基底に対応して一意的であり、かつ、近似的な意味で確率的である古典的混合状態とは異なり、本源的な意味で確率的である。


量子系の一般的な状態は記録基底混合状態であるとする解釈(以下、実存主義的様相解釈という)では、1個の光子をH偏光板に入力した場合、出力光子の状態は水平偏光状態|H>になるとはいえない。
1個の光子がH偏光板から出力される時点で、たとえば、その光子を引き続き+45°偏光光子だけを透す+45偏光板に入力することが確定していれば、H偏光板から出力された時点の光子の状態は、透過(非吸収)により+45°偏光状態|+45>として記録される確率と、吸収により-45°偏光状態|-45>として記録される確率とがそれぞれ50%の記録基底混合状態であって、水平偏光状態|H>ではない。


一方、コペンハーゲン解釈では、1個の光子をH偏光板に入力した場合、出力光子の状態は水平偏光状態|H>になると主張する(射影仮説)。
それが本当ならば、H偏光板から出力された水平偏光状態|H>の光子を、さらに+45偏光板に入力すると、50%の確率で+45偏光板から出力される光子の状態は+45°偏光状態|+45>になるはずである。
しかし、|H>=(1/√2)|+45>+(1/√2)|-45> → |+45>という波束の収縮は、純粋状態の時間発展を記述するシュレーディンガー方程式と相容れない(観測問題)。


実存主義的様相解釈によれば、シュレーディンガー方程式の正当性も、波束の収縮の現実性も、ともに肯定したまま観測問題を解決できる。
なぜなら、実存主義的様相解釈では、一般的な量子状態を記録基底混合状態として捉うので、波束の収縮は、
記録基底混合状態を構成する純粋状態の一つ(可能性の一つ)が現実化する現象
(例:+45偏光板に関する記録基底混合状態を構成する純粋状態|+45>, |-45>のうち|+45>が現実化する現象)
として定義できるからである。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (6)

ac1922

記録は世界の様相を一変させる (Lick expedition, 1922)


実存主義的様相解釈にもとづいて、ミンコフスキー時空図上で光子の偏光状態の時間発展を概観する。
この考察の視座は、「かくあって別様ではない歴史」を内包する過去光円錐の頂点に位置する「私」の「いまここ」である。


予め、1個の光子を水平偏光光子のみを透す第1の偏光板P1hに入力することが確定しているものとする。 そして、第1の偏光板P1hを透過した光子は、引き続き、第2の偏光板P2によってその偏光状態を記録するものとする。 ただし、別途シュテルンゲルラッハ装置により1個の電子のスピンをダウン,アップそれぞれ半々の確率でと記録するものとし、第2の偏光板P2は、 スピンダウンの記録を原因として、+45°偏光光子のみを透す+45偏光板P2dに設定され、 スピンアップの記録を原因として、垂直偏光光子のみを透すV偏光板P2vに設定されるものとする。

fig5

図5では、光子が第1の偏光板P1hを透過する時空点は、スピンダウンの記録事象R_downを頂点とする未来光円錐内に入っている。したがって、第1の偏光板P1h透過直後において、光子は第2の偏光板P2dを50%の確率で透過することが確定している。
そこで、実存主義的様相解釈では、第1の偏光板P1h出力時点から第2の偏光板P2d入力時点までの光子の偏光状態は、


|+45>の確率 = 50%
|-45>の確率 = 50%


という記録基底混合状態であると解釈する。
なお、図中の緑色の鎖線は、電子のスピンの記録から第2の偏光板の透過軸角度設定にいたる決定論的な過程を表している。

fig6

一方、図6では、光子が第1の偏光板P1hを透過する時空点は、スピンアップの記録事象R_upを頂点とする未来光円錐内に入っている。したがって、第1の偏光板P1h透過直後において、光子は第2の偏光板P2vで完全に遮断されることが確定している。
そこで、実存主義的様相解釈では、第1の偏光板P1h出力時点から第2の偏光板P2v入力時点までの光子の偏光状態は、


|H>の確率 = 100%
|V>の確率 = 0%


という記録基底混合状態であると解釈する。


このように、第1の偏光板P1h透過直後の光子の偏光状態が、未来の第2の偏光板P2の透過軸角度設定に対応して記録基底混合状態になっているという事態は、一見すると、因果律に反するように見える。 しかし、スピン記録事象Rを頂点とする未来光円錐の内側では、第2の偏光板P2の透過軸角度が確定しているので、上記対応関係は因果律に反しない。
注目すべきことに、第1の偏光板P1h透過時点に純粋状態|H>として記録された光子の状態は、透過直後に、力学的相互作用なしに記録基底混合状態へと遷移する。 そこで、このような記録可能性の変化にともなう非力学的な状態の遷移を様相遷移とよぶことにする。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (7)

street

de Chirico, Melancholy and Mystery of a Street


次に、光子が第1の偏光板P1hを透過する時空点を「電子のスピンの記録事象Rを頂点とする未来光円錐(以下、記録光円錐という)」の外側に設定した場合について考察する。
その場合、第1の偏光板P1h出力時点から「電子のスピンの記録事象Rを頂点とする記録光円錐面RLC surface」までの光子の偏光状態は、±45記録基底混合状態とHV記録基底混合状態とからなる複合的な記録基底混合状態になる。


《P1h〜RLC surface》
±45記録基底混合状態の確率 = 50%
(∴|+45>の確率 = 25%, |-45>の確率 = 25%)
HV記録基底混合状態の確率 = 50%
(∴|H>の確率 = 50%, |V>の確率 = 0%)

fig7

図7では、光子はスピンダウンの記録事象R_downを頂点とする記録光円錐に進入する。すると、光子の状態は記録光円錐面RLC surfaceを境界面として±45記録基底混合状態へと様相遷移する。


《RLC surface〜P2d》
|+45>の確率 = 50%
|-45>の確率 = 50%


結局、第2の偏光板P2dを光子が透過する確率は50%であり、図5の場合と変わらない。

fig8

一方、図8では、光子はスピンアップの記録事象R_upを頂点とする記録光円錐に進入する。すると、光子の状態は記録光円錐面RLC surfaceを境界面としてHV記録基底混合状態へと様相遷移する。


《RLC surface〜P2v》
|H>の確率 = 75%
|V>の確率 = 25%


これは、次の2点において全く驚くべき事態である。
1.「透過軸が互いに直交する2枚の偏光板は、光を完全に遮断する」という光学の常識が覆される。
2.スピン記録事象Rの時空点を図5,図6の位置に設定するか図7,図8の位置に設定するかによって、信号0か信号1かを送信し、第2の偏光板P2vの出力ポートにおいて光子を検出しないか検出するかによって、信号0か信号1かを確率的に受信する通信が可能になる。ゆえに、「通信は力学的相互作用を媒介として行われる」という物理学の常識が覆される。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (8)

cat

M.C. Escher, White Cat 1


実存主義的様相解釈は、シュレーディンガーの猫を半死半生の状態から救い出す。


猫は、現実世界に存在する。
現実世界とは歴史世界に他ならない。
したがって、シュレーディンガーの猫は、歴史世界を内包する過去光円錐の頂点に位置する「いまここ」の「私(観測主体)」の視座において論じられる。


実験に際して、ラジウム塊RDMは「ガイガーカウンターGC設置の原因事象C_setupを頂点とする未来光円錐」の内側に存在する。
ゆえに、ラジウム塊RDMからガイガーカウンターGCに向かって放出されるアルファ粒子の状態は、放出(検出)・非放出(非検出)の記録基底混合状態である(←実存主義的様相解釈)。
よって、アルファ粒子の放出・非放出はガイガーカウンターGCでの検出・非検出により歴史的事実として確定する(記録される)。

fig9

図9に示した歴史世界は、アルファ粒子の放出がガイガーカウンターGCでの検出記録事象R_detectにより歴史的事実として確定し、青酸ガスHCNのビンが割られ、猫が死ぬ歴史世界である。

fig10

一方、図10に示した歴史世界は、アルファ粒子の非放出がガイガーカウンターGCでの非検出記録事象R_nonにより歴史的事実として確定し、青酸ガスHCNのビンが割られず、猫が生き残る歴史世界である。


以上のように、実存主義的様相解釈によれば、ガイガーカウンターによるアルファ粒子の放出・非放出の記録によって、記録基底混合状態を構成する純粋状態の一つ(可能性の一つ)が現実化する。
すなわち、ガイガーカウンターで波束の収縮が起こる。
よって、観測前の猫の状態は、生きた状態か死んだ状態かのどちらかに確定している。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (9)

hokusai_dragon test_anime

葛飾北斎「龍図」


実存主義的様相解釈は、Dragonを覆った霧を吹き払う。


コペンハーゲン解釈と多世界解釈のどちらにも精通していたジョン・ホイーラーは、彼の有名な思考実験「遅延選択実験」を通じて、従来解釈では説明できない状態遷移(Great Smoky Dragon)への注意を喚起した。

fig11

図11(a)に示したようにマッハツェンダー干渉計(以下MZ干渉計という)に光子1個を入力した場合、左光路と右光路の光路差をゼロにすれば、干渉によって検出器D1で光子が検出される確率はゼロになる。一方、図11(b)に示したように、ビームスプリッタBS2を光路から外し、かつ、検出器D1が光子を検出した場合、光子は右光路を通ってきたと推測できる。他方、図11(c)に示したように、ビームスプリッタBS2を経路から外し、かつ、検出器D2が光子を検出た場合、光子は左光路を通ってきたと推測できる。そこで、MZ干渉計内に光子が存在する時間帯にビームスプリッタBS2の抜き差しを選択したら、MZ干渉計内の光子が左光路状態と右光路状態の重ね合わせとしての純粋状態であったのか、それとも左光路状態の確率50%,右光路状態の確率50%の混合状態であったのかが、事後的な選択(遅延選択)に対応するということになる。しかし、従来解釈は「MZ干渉計内の光子がどのような過程を経てビームスプリッタBS2の設定に対応する状態へと遷移するのか」という疑問に全く答えていない。ホイーラーはP.C.W.デイヴィスのインタビューで次のように述べている。


(引用開始)
はっきり思い描くことのできることは、実際、「霧中の竜王(Great Smoky Dragon)」のようなものです。竜の尾は鋭くはっきりしています。それは光子が器具の中に入って半透明鏡を通過するときです。竜の口はきわめて明白です。それは光子が一方あるいは他方の検出器に達したときです。しかしその間は、それが存在するという権利はありません。
(引用終了)P.C.W.デイヴィス他編、出口修至訳「量子と混沌」より


遅延選択実験に関する従来の考察には、重大な欠陥がある。すなわち、従来の考察は遅延選択(実験装置の設定)の究極的な原因となる事象がいつどこで起こったのかについて全く考慮していない。


遅延選択の究極的な原因となる事象を明確にするために、実験系に1個の電子のスピンを記録するシュテルンゲルラッハ装置を追加し、スピンダウンが記録されたらビームスプリッタBS2を光路に挿入し、スピンアップが記録されたらビームスプリッタBS2を光路から外すことにする。ただし、スピンダウンとスピンアップの確率は半々になるように予め設定しておく。

なお、以下に示すミンコフスキー時空図上では、MZ干渉計を2次元時空上に表現するために、図11を縦方向に収縮させた1次元のMZ干渉計について考察する。こうすれば、光子の世界線を光路に見立てることによって、2次元時空上にMZ干渉計を表現できるので大変都合が良い。

fig12

図12では、光子がビームスプリッタBS1を通過する時空点は、スピンダウンの記録事象R_downを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光子が左右どちらの光路にあるかについて記録される可能性は全くない。
そこで、実存主義的様相解釈では、ビームスプリッタBS1からビームスプリッタBS2までの光子の光路状態は、


(1/√2)|左光路> + (1/√2)|右光路>


という純粋状態であると解釈する。

fig13

一方、図13では、光子がビームスプリッタBS1を通過する時空点は、スピンアップの記録事象R_upを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光子はビームスプリッタBS1を出力した直後から、50%の確率で左光路状態と記録され、50%の確率で右光路状態と記録されることが確定している。
そこで、実存主義的様相解釈では、ビームスプリッタBS1から検出器D1,D2までの光子の状態は、


|左光路>の確率 = 50%
|右光路>の確率 = 50%


という記録基底混合状態であると解釈する。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (10)

dragon

M.C. Escher, Dragon


次に、光子がビームスプリッタBS1を通過する時空点を「電子のスピンの記録事象Rを頂点とする記録光円錐」の外側に設定した場合について考察する。
その場合、ビームスプリッタBS1から「電子のスピンの記録事象Rを頂点とする記録光円錐面RLC surface」までの光子の光路状態は、「左光路状態と右光路状態が重ね合わされた純粋状態」と「左光路状態と右光路状態の確率的混合としての混合状態」とからなる複合的な記録基底混合状態になる。


《BS1〜RLC surface》
|左光路>+|右光路>の確率 = 50%
|左光路>の確率 = 25%
|右光路>の確率 = 25%

fig14

図14では、光子はスピンダウンの記録事象R_downを頂点とする記録光円錐に進入する。この場合、ビームスプリッタBS2が光路に挿入されるので、MZ干渉計内で光子の光路が記録される可能性は全くない。したがって、光子の状態はビームスプリッタBS1からビームスプリッタBS2までの間変化しない。


《BS1〜BS2》
|左光路>+|右光路>の確率 = 50%
|左光路>の確率 = 25%
|右光路>の確率 = 25%


そこで、


《BS2〜D1, D2》
|D1ポート>の確率 = 25%
|D2ポート>の確率 = 75%


ゆえに、図14の場合、
検出器D1における光子検出確率は25%になる。
よって、「ビームスプリッタB1,B2間の光路差をゼロに設定したMZ干渉計では、検出器D1における光子検出確率は必ずゼロなる」という常識は間違いである。

fig15

一方、図15では、光子はスピンダウンの記録事象R_upを頂点とする記録光円錐に進入する。この場合、光子は記録光円錐内に進入した時点で検出器D1, D2どちらかで検出されることが確定するので、光子の状態は左光路状態と右光路状態の確率的混合としての記録基底混合状態へと様相遷移する。


《RLC surface〜D1, D2》
|左光路>の確率 = 50%
|右光路>の確率 = 50%


ホイーラーは、天文学的スケールの遅延選択実験を構想した。従来解釈によれば、ビームスプリッタBS1, BS2間の光路長がたとえ50億光年あったとしても、ビームスプリッタBS2を光路に挿入すれば、検出器D1での光子検出確率はゼロになり、ビームスプリッタBS2を光路から外せば、検出器D1での光子検出確率は50%になる。だが、50億年前の光子の状態がビームスプリッタBS2の抜き差しによって決まるという事態は因果律に反する。そこで、ホイーラーは、「過去は、現在の記録上に存在しない限り意味も存在もない。」と主張し、記録から再記録までの間の量子状態の時空的記述をGreat Smoky Dragonにたとえて放棄した。しかし、実存主義的様相解釈は、Dragonを覆った霧を吹き払った。実存主義的様相解釈によれば、ビームスプリッタBS2を光路に挿入した場合でも検出器D1での光子検出確率は必ずしもゼロにならない。検出器D1における光子検出確率は、ビームスプリッタBS2の抜き差しを決定する究極的な原因事象Rの時空上の位置に依存するのである。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (11)

nuclear_bomb

歴史は力のみにて変遷するにあらず


1993年、エリツールとベイドマンは、以下のような反事実条件文を満たす爆弾検査装置(無相互作用測定装置)を提案した。


「もし、検査対象の爆弾が不発弾ではない正常な爆弾だったなら(爆発する可能性があったなら)、全く相互作用を介することなくそれが正常であることを判定できたであろう。」


図16に示したように、MZ干渉計の左光路には検査対象の爆弾(不発弾Dudもしくは正常爆弾Good)がセットされている。爆弾の外側に突き出た起爆プランジャーの先端にはミラーが取り付けられている。正常爆弾の起爆装置は大変鋭敏にできているので、ミラーに光子が1個当たっただけでも激しく爆発する。一方、不発弾は、プランジャーがさび付いてしまっていて動かない。そのため、不発弾は光学デバイス(ミラー)としての役目しか果たさない。

fig16

図16(a)に示したように、予めセットされた検査対象が不発弾である場合、ビームスプリッタBS1, BS2間の光子の状態は、左光路状態と右光路状態とが重ね合わされた純粋状態なので、検出器D1で光子が検出される可能性は破壊的な干渉によってゼロである。一方、予めセットされた検査対象が正常な爆弾である場合は、図16(b)に示したように光子が右光路を通って検出器D1で検出される可能性は25%であり、図16(c)に示したように爆弾が爆発する可能性は50%である。しがって、爆弾が正常な場合、25%の確率でそれを爆発させることなく判定することが可能である。ここで注目すべきことは、光子と正常爆弾とが全く相互作用していないにもかかわらず、検出器D1での光子の検出(正常爆弾の判定)という現実の効果が生じるということである。


爆弾検査問題の時空的様相をミンコフスキー時空図上で考察する。
なお、考察対象のMZ干渉計は、図16を縦方向に収縮させた1次元のMZ干渉計とし、また、その光路の屈折率を√3に設定する。こうすれば、光子の世界線を光路に見立てることによって2次元時空上にMZ干渉計を表現でき、なおかつ、光子の世界線が時間軸に対して30°になり、光円錐面(時間軸に対して45°)と区別できて大変都合が良い。


爆弾検査装置に不発弾をセットするか正常爆弾をセットするかを決める究極的な原因事象が必ず存在する。その究極的な原因事象の時空座標を明確にするために、1個の電子のスピンを記録するシュテルンゲルラッハ装置を想定し、スピンダウンが記録されたら不発弾がセットされ、スピンアップが記録されたら正常爆弾がセットされるものとする。ただし、スピンダウンとスピンアップの確率は半々になるように予め設定してあるものとする。

fig17

図17では、光子がビームスプリッタBS1を透過する時空点は、スピンダウンの記録事象R_downを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光路には予め不発弾がセットされているので、光子が左右どちらの光路にあるかについて記録される可能性は全くない。
そこで、ビームスプリッタBS1からビームスプリッタBS2までの光子の光路状態は、


《BS1〜BS2》
(1/√2)|左光路> + (1/√2)|右光路>


一方、図18,図19では、光子がビームスプリッタBS1を透過する時空点は、スピンアップの記録事象R_upを頂点とする記録光円錐内に入っている。したがって、光路には予め正常爆弾がセットされている。

fig18

fig19

光子が検査対象に到達する予定時刻において、図18に示した非爆発事象R_non(光子非到達の記録)あるいは図19に示した爆発事象R_bang(光子到達の記録)によって波束の収縮が起こる。
従来解釈の支持者は、非爆発事象R_nonあるいは爆発事象R_bangが起こるのと同時に右光路の光子の存在あるいは非存在が確定するとしばしば主張する。しかし、これは全く不可解な主張である。なぜなら、そうすると右側光路において波束の収縮が起こる時空点が座標系のとりかたに依存してしまうので、ローレンツ不変が成立しないからである。
実際、
「ある事象を中心として対称に広がるローレンツ不変な超曲面は、その事象を頂点とする光円錐面に限られる。」
そこで、実存主義的様相解釈では、
「波束は、量子記録事象を頂点とする記録光円錐面において収縮する。」
と解釈する。
したがって、 BS1から記録光円錐面R_non_s, R_bang_sまでの光子の状態は、以下の記録基底混合状態である。


《BS1〜R_non_s, R_bang_s》
|左光路>の確率 = 50%
|右光路>の確率 = 50%

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (12)

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Bohr and Einstein


アインシュタインは、量子もつれ対に関する非局所的かつ非力学的な波束の収縮をspooky action at a distance(遠隔怪作用)と呼んだ。このspooky action at a distanceをローレンツ不変の形に記述できない限り、EPRパラドックスはパラドックスのままであり続ける。


図20は、偏光量子もつれ光子対のEPR相関を測定する典型的な測定系である。

fig20

生成時点の光子対の状態は、下記の偏光量子もつれ状態にあるものとする。


|Ψ> = (1/√2) ( |H a >|H b > + |V a > |V b > )

(1)
  

偏光板PLa, PLbを透過する光子を検出する検出器Da, Dbは、光子が偏光板PLa, PLbの透過軸方向の直線偏光状態|Ta>, |Tb>であるか、それと直交する吸収軸方向の直線偏光状態|Aa>, |Ab>であるか、を測定する測定系になっている。偏光板の透過軸の角度をθa, θbとすると、式(1)は次のように書き換えられる。


|Ψ> = (1/√2) { ( cosθa|Ta> - sinθa|Aa> ) ⊗ ( cosθb|Tb> - sinθb|Ab> )
    + ( sinθa|Ta> + cosθa|Aa> ) ⊗ ( sinθb|Tb> + cosθb|Ab> ) }
   = (1/√2) { cos(θa - θb)|Ta>|Tb> + sin(θa - θb)|Ta>|Ab>
    - sin(θa - θb)|Aa>|Tb> + cos(θa - θb)|Aa>|Ab> }

(2)

図21は、この測定系のミンコフスキー時空図である。

fig21

図のように光子対生成事象PPPが、「偏光板PLa, PLbの透過軸の角度θa, θbの設定を確定する究極的な原因事象C_set」を頂点とする記録光円錐に入っているとすれば、光子対生成事象PPP直後から偏光板PLa, PLbにおける記録事象R_a, R_b直前までの光子対の状態は、次のような記録基底混合状態である。


《PPP〜R_a, R_b》
|Ta>|Tb>の確率 = (1/2)cos2(θa - θb)
|Ta>|Ab>の確率 = (1/2)sin2(θa - θb)
|Aa>|Tb>の確率 = (1/2)sin2(θa - θb)
|Aa>|Ab>の確率 = (1/2)cos2(θa - θb)


つまり、
光子対の状態は、光子対生成事象PPP直後に、その記録可能性に対応する記録基底混合状態へと様相遷移(非力学的に遷移)し、
記録基底混合状態となった波束は、記録事象R_a, R_bを頂点とする記録光円錐面において非局所的かつ非力学的に収縮する。
よって、実存主義的様相解釈は、検出器Da, Dbの同時検出確率に関するベルの不等式を破る実験事実と無矛盾であり、なおかつ、非局所的かつ非力学的な波束の収縮をローレンツ不変な形に記述することができる。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (13)

copositionVIII

Vasily Kandinsky, coposition VIII


引き続きEPR相関について考察する。


下記の図22に示したように、偏光量子もつれ光子対生成事象PPPが、
「偏光板PLaの透過軸角度θaを決定した究極的な原因事象C_θa_set」を頂点とする記録光円錐の内側に入っている一方、
「偏光板PLbの透過軸角度θbを決定した究極的な原因事象C_θb_set」を頂点とする記録光円錐の外側に出ている場合について考える。


なお、光子の世界線と光円錐面との区別を明確にするために、光路の屈折率を√3(光子の世界線を時間軸に対して30°)に設定してある。

fig22

光子対生成事象PPPの時空点において、偏光板PLbの透過軸角度がθbに設定される可能性は50%であり、その他の可能性として透過軸角度θb´に設定される可能性が50%あるものとする。ただし、ここでθb = θb´+ 45°である。また、偏光板PLbの透過軸がθb´に設定された場合は、透過軸方向の直線偏光状態を|Tb´>と表し、吸収軸方向の直線偏光状態を|Ab´>と表すものとする。すると、生成時点の光子対の状態は以下のようになる。


|Ψ> = (1/√2) ( |H a >|H b > + |V a > |V b > )
   = (1/√2) { cos(θa - θb)|Ta>|Tb> + sin(θa - θb)|Ta>|Ab>
    - sin(θa - θb)|Aa>|Tb> + cos(θa - θb)|Aa>|Ab> }
   = (1/√2) { cos(θa - θb´)|Ta>|Tb´> + sin(θa - θb´)|Ta>|Ab´>
    - sin(θa - θb´)|Aa>|Tb´> + cos(θa - θb´)|Aa>|Ab´> }

 
(3)

光子対の状態は光子対生成事象PPP直後に記録基底混合状態へと様相遷移する。「偏光板PLbの透過軸角度をθbに決定した究極的な原因事象C_θb_set」を頂点とする記録光円錐の外側では、偏光板PLbの透過軸がθbに設定される可能性とθb´に設定される可能性とはそれぞれ50%なので、光子対の記録基底混合状態は以下のようになる。


《PPP〜R_a, C_θb_set_s》
|Ta>|Tb>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb)
|Ta>|Ab>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb)
|Aa>|Tb>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb)
|Aa>|Ab>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb)
|Ta>|Tb´>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb´)
|Ta>|Ab´>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb´)
|Aa>|Tb´>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb´)
|Aa>|Ab´>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb´)


θb = θb´+ 45°なので、次の変換式が成り立つ。


|Tb´> = (1/√2)|Tb> - (1/√2)|Ab>,
|Ab´> = (1/√2)|Tb> + (1/√2)|Ab>


したがって、


|Ta>|Tb´>が|Ta>|Tb>として記録される確率 = (1/8)cos2(θa - θb´)
|Ta>|Tb´>が|Ta>|Ab>として記録される確率 = (1/8)cos2(θa - θb´)
|Ta>|Ab´>が|Ta>|Tb>として記録される確率 = (1/8)sin2(θa - θb´)
|Ta>|Ab´>が|Ta>|Ab>として記録される確率 = (1/8)sin2(θa - θb´)
|Aa>|Tb´>が|Aa>|Tb>として記録される確率 = (1/8)sin2(θa - θb´)
|Aa>|Tb´>が|Aa>|Ab>として記録される確率 = (1/8)sin2(θa - θb´)
|Aa>|Ab´>が|Aa>|Tb>として記録される確率 = (1/8)cos2(θa - θb´)
|Aa>|Ab´>が|Aa>|Ab>として記録される確率 = (1/8)cos2(θa - θb´)


ゆえに、記録事象C_θb_setに関する記録光円錐の内側、かつ、記録事象R_aに関する記録光円錐の外側の時空領域におにいて、光子対は以下のような記録基底混合状態である。


|Ta>|Tb>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb) + 1/8
|Ta>|Ab>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb) + 1/8
|Aa>|Tb>の確率 = (1/4)sin2(θa - θb) + 1/8
|Aa>|Ab>の確率 = (1/4)cos2(θa - θb) + 1/8


そして、記録光円錐面R_a_sと記録光円錐面R_b_sにおいて波束が収縮する。


PLa, PLbどちらにおいても光子が吸収されずに掛け合わせ状態|Ta>|Tb>が記録される確率とは、検出器Da, Dbでの同時検出確率に他ならない。下記の図23は、図21におけるEPR相関と図22におけるEPR相関の比較図である。

fig23

つまり、実存主義的様相解釈によれば、
EPR相関は、AliceとBobそれぞれの記録基底を決定する究極的な原因事象群の時空的位置関係に依存する。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (14)

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Max Born


「ボルンの規則は、量子力学の法則で、量子系についてある物理量(オブザーバブル)を測定したとき、ある値が得られる確率を与える。(ウィキペディア/2014)」
上記の説明だけでは、ボルンの規則が量子系の時間発展に適用される一般的な法則なのか、それとも、測定過程に限定される特殊な規則なのかが曖昧である。ボルンの規則が物理法則であるなら、後者ではなく、前者であろう。


測定や観測可能量(オブザーバブル)という用語は、観測者や操作者の意識や意志と親和性があるため、このような用語を用いてボルンの規則を表現すると、ボルンの規則があたかも観測者や操作者が介入したときに限定的に適用される規則であるかのような印象が生じる。
そこで、測定というかわりに記録といい、観測可能量(オブザーバブル)というかわりに記録可能量(レコーダブル)ということにより、ボルンの規則を一般の記録対象系の時間発展に適用される法則として捉えることにする。


透過軸+45°の第1偏光板を透過することにより、その透過時点に+45°偏光状態であることが記録された光子を、透過軸0°の第2偏光板に入射させる場合について考える。
コペンハーゲン解釈は、第1偏光板を透過した直後から第2偏光板に入射する直前までの光子の状態が純粋状態|+45>になっていると主張する(:射影仮説)。そして、光子が第2偏光板に入射した時点で、ボルンの規則が適用されて水平偏光あるいは垂直偏光という値がそれぞれ50%の確率で記録(測定)されると主張する。つまり、コペンハーゲン解釈は射影仮説とボルンの規則に基づいているといえる。


もし、ボルンの規則を記録対象系の状態遷移の規則だと捉えるなら、上記の例のように第1偏光板で純粋状態|+45> = (1/√2)|H> + (1/√2)|V>として記録された系は、第2偏光板で記録される前の段階でボルンの規則に従って|H>である確率と|V>である確率とがそれぞれ50%の混合状態へと遷移するということになる。しかし、光子到達時点の第2偏光板の設定に応じて、到達前の光子の状態が純粋状態から混合状態へと遷移するという事態は逆因果的で可笑しい。また、仮に逆因果的な効果があるとしても、その効果がどの時点にどのような形でもたらされるのかも不明である。


記録時の記録装置(非人工物であってよい)の設定と記録前の記録対象系の状態遷移との因果関係に関するパラドックスを回避し、記録対象系の状態遷移をローレンツ不変な形に記述するためには、「ボルンの規則は記録基底の設定可能性の変化に即して適用される」と考える以外にない。以下その理由を説明する。


記録装置の設定にはその設定を確定した原因が必ず存在する。
そして、その原因がそれ以上遡ることのできない原因であればそれは究極的な原因だといえる。
それ以上遡ることができないとは、決定論的に遡及できないということである。
決定論的に遡及できないとは、非決定論的な事象によって遡及が断ち切られているということである。
非決定論的な事象とは本源的な確率事象である。
本源的な確率事象とは量子力学的な確率事象である。
量子力学的な確率事象とは何らかの量子記録事象である。
つまり、別途量子記録事象を究極的な原因事象として、当該記録装置の設定が確定する。
または、別途量子記録事象を究極的な原因事象として、当該記録装置の設定の可能性が限定される。
当該記録装置の設定が確定した時空領域では、必ず、その記録装置の記録基底に関する記録が行われるのだから、その時空領域における記録対象系の状態はその記録基底に関する混合状態(記録基底混合状態)だと考えてよい。
同様に、当該記録装置の設定の可能性が限定された時空領域では、必ず、その記録装置の記録基底の可能性に関する記録が行われるのだから、その時空領域における記録対象系の状態はその記録基底の可能性に関する記録基底混合状態だと考えてよい。
当該記録装置の設定が確定した時空領域や当該記録装置の設定の可能性が限定された時空領域とは、その究極的な原因事象である別途量子記録事象を頂点とする未来光円錐(記録光円錐)の内側の時空領域である。
したがって、ボルンの規則とは「当該記録装置の設定に関する究極的な原因事象である別途量子記録事象」を頂点とする記録光円錐面で起こる当該記録対象系の状態遷移に関する規則である(:実存主義的様相解釈)。そして、その遷移が光円錐面で起こるがゆえに、ボルンの規則は因果律と無矛盾であり、かつ、ローレンツ不変である。


すでに、我々はエリツール・ベイドマンの爆弾検査問題やEPR相関といった非力学的な状態遷移や非局所的な状態遷移を事実として承認している。だから、実存主義的様相解釈が非力学的かつ非局所的な遷移(様相遷移)を要請しても少しも不思議なことではない。
また、ボルンの規則が、一般の量子系の時間発展に適用される法則だからといって、実存とは無縁の法則だというわけではない。なぜなら、ボルンの規則に従って非決定論的に積み重ねられた記録、すなわち、「かくあって別様ではない歴史」を内包する過去光円錐の頂点に私のいまここが位置するからである。畢竟、ボルンの規則は私(観測主体)のいまここという視座において語られる法則なのである。

(つづく)


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「私」と「他者」と「物理世界」 (15)

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John von Neumann and the EDVAC


フォン・ノイマンの射影仮説(射影公準)とは次のような規則である(1)


・ 状態|ψ>にある系は、物理量Aの測定後、得られた測定値aiに対応する固有状態|ai>となる。


この射影仮説には次の2つの役割がある(2)


(A) 異なる測定値に対応する量子状態の間の干渉をなくす
(B) 干渉のなくなった複数の量子状態の中からどれか一つを選び出す


上記のうち(B)は、次の反復仮説とよばれる経験則を根拠としている(3)


・ 物理量Aを測定して測定値aiを得た直後に、Aを測定するならば、確率1で同じ測定値aiが測定される


つまり、測定直後の量子系の状態がその測定値に対応する固有状態になっている((B)が成立している)からこそ、測定を反復すると確率1で同じ測定値が得らるというわけである。逆にいえば、反復仮説に反する事実を示すことができれば射影仮説はその根拠を失う。


実存主義的様相解釈は、反復仮説に反する状況を予想する。
具体例として図24に示したように、1個の光子が透過軸0°の第1偏光板P1hを透過(非吸収)したことにより水平偏光という値が記録された直後に、その光子が透過軸90°の第2偏光板P2vに入射した場合を考える。

fig24

もし反復仮説が正しいなら、その光子は確率1で第2偏光板P2vに吸収されることによって水平偏光という値が記録される。したがって、検出器D1での光子検出確率はゼロになる。この反復仮説にもとづく見解は、我々の常識(:2枚の偏光板の透過軸を直交させると光が遮られる)とも合致している。
しかし、すでに第7節で述べたとおり、実存主義的様相解釈の立場に立つと、その光子が第2偏光板P2vを有意な確率で透過して検出器D1で検出される状況が想定できる。図25はその状況を示したミンコフスキー時空図である。

fig25

光子が第1偏光板P1hを透過する時点では、第2偏光板P2の透過軸角度はまだ決まっておらず、90°に設定される確率と45°に設定される確率とがそれぞれ50%だとする。すると、第1の偏光板P1h透過時点から記録光円錐面C_v_set_sまでの光子の偏光状態は、±45記録基底混合状態とHV記録基底混合状態とからなる複合的な記録基底混合状態になる。このとき、|+45>,|-45>,|H>,|V>それぞれの確率はボルンの規則によって以下のように割り当てられる。


《P1h〜C_v_set_s》
±45記録基底混合状態の確率 = 50%
∴|+45>の確率 = 25%, |-45>の確率 = 25%
HV記録基底混合状態の確率 = 50%
∴|H>の確率 = 50%, |V>の確率 = 0%


そして、透過軸角度を90°に設定することを確定する究極的な原因事象C_v_setを頂点とする記録光円錐面C_v_set_sを境界として、第2偏光板P2の透過軸角度が90°に設定される確率は100%へと変化する。その場合、記録光円錐面C_v_set_sを境界面として光子の状態はHV記録基底混合状態へと様相遷移する。このとき、|H>,|V>それぞれの確率はボルンの規則によって以下のように割り当てられる。


《C_v_set_s〜P2v》
|H>の確率 = 75%
|V>の確率 = 25%


したがって、光子は確率25%で第2偏光板P2vを透過し検出器D1で検出される。


下記の表1は、コペンハーゲン解釈と実存主義的様相解釈の原理的要素を比較したものである。実存主義的様相解釈では、量子系の一般的な状態を記録基底混合状態として捉える。というのは、通常、量子系の物理量の値が環境中で記録される可能性はゼロでないから、記録可能性の非存在を前提とした純粋状態よりも、記録可能性の存在を前提とした記録基底混合状態を量子系の一般的な状態として捉える方が自然だからである。また、実存主義的様相解釈では、波束の収縮を記録光円錐面における様相遷移として捉える。そのため、波束の収縮は単に当該記録対象系の波束の収縮であるに留まらず、当該記録事象を究極的な原因事象として記録基底が設定される別途記録対象系に様相遷移をもたらす。さらに、実存主義的様相解釈では、ボルンの規則を記録光円錐面で起こる様相遷移に関する確率規則として捉える。

table1

現時点における実存主義的様相解釈の最大の強みは、実験による検証(実証または反証)が可能だという点にある。したがって、現段階では、実存主義的様相解釈の理論体系の整備に拘らず、その検証実験の企画・実行に専念するのが得策である。


参考文献
(1) 白井仁人他,「量子という謎/量子力学の哲学入門」,勁草書房,2012年.
(2) 清水明,Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications.
(3) 木村元,「量子情報科学ウィンタースクール2010」.

(つづく)


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