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ブログを開設しました。

レイ・カーツワイルは、2045年に私たちの文明が技術的特異点(以下シンギュラリティという)に到達するといいました。シンギュラリティとは、AIが人間を追い越して加速度的に進化し始める時点です。シンギュラリティ以降は、「スーパーAI」が作り出す超技術によって誰もが不老不死や超能力を獲得できる時代になるかもしれません。

それにしても、2045年・・・・
その時、私は93才・・・・?

私は、不老不死や超能力を獲得したいとは思いません。しかし、シンギュラリティという人類史上最大のスペクタクルを是非この目で見たいと切望しています。

もし、このブログの親サイト(TimeComm.info)のテーマであるタイムコミュニケーションが実現できれば、シンギュラリティは一気に到来するでしょう。

タイムコミュニケーションは可能なのでしょうか?私たちは、シンギュラリティという極限的な状況において、何を選択し、どこへ行くのでしょうか?それらの疑問は、今この時代に生きる私たちだけに与えられた壮大なミステリーです。

これから、このブログを通じてタイムコミュニケーションやシンギュラリティについて多くの方と語り合えることを楽しみにしています。


因果のロープ

「カテゴリー: TimeCommunication」の第2回目の投稿です。 このカテゴリーでは、親サイトTimeComm.infoを補足するかたちで、タイムコミュニケーションの原理を説明していきます。分かり易い説明を心がけますが、疑問点がありましたら、遠慮なくご質問ください。


常識では、未来から過去に向かって通信するタイムコミュニケーションは不可能だとされています。なぜなら、「未来における送信」を原因として、「過去における受信」という結果に至るとすると、原因と結果の時間的な順序が逆転してしまうからです。つまり、そのような通信は因果律に反するというわけです。


しかし、通信の原因が送信だという常識は本当に正しいのでしようか。たとえば、あなたがケータイやパソコンで誰かにメールを送るとき、送信ボタンを押すことがその通信の原因だといえるでしょうか。そうではないはずです。あなたは、送信ボタンを押す前に文字を入力し、文字を入力する前に、文面を考え、文面を考える前に、文の内容を着想しているはずです。そして、あなたが文の内容を着想する前に、その着想の原因となる事象が起こっているはずです。ですから、通信の原因は常に送信よりも過去に位置しています。そして、もし通信の原因が通信の結果(受信)よりも過去に位置するなら、たとえ送信が受信よりも未来に位置したとしても、その通信は因果律に反しません。


ここに、長さ2メートルのロープがあり、このロープは通信に関する情報伝達過程に対応しているものとします。つまり、ロープの一方の端が通信の原因(以下原因端という)であり、他方の端が通信の結果(以下結果端という)だとします。あなたが、そのロープの原因端を手に持って、結果端を遠くへ投げ出したとしましょう。このとき、あなたを中心として、より遠い場所がより遠い未来に対応しているとします。すると、うまくロープを投げ出せば、結果端は原因端よりおよそ2メートル分未来の位置に到達します。ところが、へたにロープを投げ出すと、結果端がUターンをして、つまり、時間を遡って戻ってきてしまいます。(下図参照)しかし、その場合でも、結果端が原因端よりも遠くに、つまり未来に、あれば、この通信に関する情報伝達過程は因果律に反しません。このロープのたとえにおいて、タイムコミュニケーションに対応するのは、Uターンをしてあなたの方に戻ってくる部分のロープです。

(つづく)



Causal Rope



因果のロープ (2)

通信の情報伝達過程は1本のロープにたとえられます。その場合、ロープの終点の結果端は受信に対応しています。ところが、ロープの始点の原因端は送信には対応しておらず、送信よりも過去に位置しています。では、原因端の位置は宇宙の始まりの時点まで遡れるのでしょうか。実は、そうではありません。なぜかというと、全く偶然に起こった出来事が原因である場合、それ以上原因を遡ることはできないからです。


例えば、ここに出目が全くランダムなサイコロがあるとしましょう。そして、送信者がそのサイコロを振って、その出目の情報を受信者に送信したとします。すると、そのサイコロ投げは、通信の究極的な原因だといえます。読者は、「サイコロを投げる前の状態は一つの状態に決まっているのだから、対応する出目も一つに決まっているはずなので、厳密に言えば出目はランダムではありえないのではないか」と疑うかもしれません。たしかに、古典力学によって記述されるような決定論的な系では、始めの状態と終わりの状態とは1対1で対応します。しかし、量子力学によって記述されるような系では、1つの始めの状態に対応する終わりの状態は1つだけとは限りません。たとえば、光子(光の粒子)1個をハーフミラーに入射させたとき、その光子が反射側で観測されるか、それとも、透過側で観測されるかは、半々の確率で全くランダムに決まります。ですから、量子力学的な確率事象は出目が全くランダムなサイコロの役目を果たすといえます。ゆえに、通信の究極的な原因は、何らかの量子力学的な確率事象であるといえます。


「因果のロープ」の原因端は量子力学的な確率事象に対応し、結果端は受信に対応することがわかりました。では、その間のロープはどんな物理過程に対応しているのでしょうか。まず、原因端から未来に向かってのびていく部分について考えてみます。この部分は、わたしたちがよく知っている情報伝達の領域です。すなわち、この部分はドミノ倒しや機械の動作や電波による通信などのように近接作用によって情報が未来へ伝達されていく過程すべてに対応しています。つぎに、ロープがUターンして戻ってくる部分について考えてみます。この部分は、先に述べたように、タイムコミュニケーションに対応しています。タイムコミュニケーションは情報を過去へ伝達するのですから、近接作用を用いることによってそれを実現することは不可能です。それは、量子相関(量子もつれ,エンタングルメント)と呼ばれる非局所的な効果を用いることによってはじめて実現できます。

「因果のロープ」完


domino

近接作用は情報を未来へ伝達します




Spooky Action at a Distance

相対論の喉には棘が刺さっています。その棘とは、アインシュタインが Spooky Action at a Distance(遠隔怪作用)と呼んだ非局所的な量子相関です。


アインシュタインは、因果律を厳密化しました。彼は、「原因に対応する結果は、その原因が起こった時空点から光の速度以下で到達できる範囲内の時空上に位置しなければならない」という法則、いわゆる相対論的因果律を発見しました。ところが、量子力学から導かれる非局所的な量子相関は、超光速の相関なので、相対論的因果律と矛盾するようにみえます。そこで、アインシュタインは、そのような spooky Action at a Distance を導き出してしまうような量子力学は、不完全な理論だと主張しました。しかし、彼の死後に行われた実験で、非局所的な量子相関は確かに超光速の相関であることが実証されました。そのため、今なお相対論の喉にはその棘が刺さったままになっているというわけです。


非局所的な量子相関の最も単純な例をみてみましょう。1個の光子をハーフミラーに入射させます。すると、その光子が反射側で観測されるか、それとも、透過側で観測されるかは、半々の確率で全くランダムに決まります。そこで、下図のように光子を入射させるハーフミラーを東京に置き、そのハーフミラーの反射側の検出器を福岡に置き、そのハーフミラーの透過側の検出器を札幌に置いたとしましょう。もし、福岡で光子が検出されれば、当然、札幌では光子が検出されません。逆に、福岡で光子が検出されなければ、当然、札幌では光子が検出されます。つぎに、札幌の検出器をはずして、光子が札幌を通過するようにしたとします。その場合、福岡で光子が検出されれば、その時、札幌を通る光路には光子は存在しないはずです。また、福岡で到達予定時刻に光子が検出されなければ、その時、札幌を通る光路には光子が存在するはずです。一見あたりまえの推測に思えますが、実は、この推測は重大な問題を孕んでいます。


japan_map

もし、ハーフミラーを出た光子の状態が反射した状態か透過した状態かのいずれか1つの状態だとすれば、札幌での光子の有無は、福岡での測定の前から確定していたといえます。ところが、下図のような実験によって、ハーフミラーを出た光子の状態は、「福岡側の光子と札幌側の光子との重ね合わせの状態」であることが示されます。下図は、福岡と札幌それぞれに置いたミラーと日本海の海上に置いたハーフミラーとによって、福岡経由の光路と札幌経由の光路とを日本海の海上で合成した様子を表しています。ここで、東京のハーフミラーから福岡経由で日本海の海上のハーフミラーにいたる光路の長さと、東京のハーフミラーから札幌経由で日本海の海上のハーフミラーにいたる光路の長さとを厳密に等しく設定したとします。すると、大変面白いことに、光子はロシア側でのみ検出され、コリア側で検出されることはありません。これは、福岡経由の光子の状態と札幌経由の光子の状態が、ロシア側の出口では足し合わされ、コリア側の出口では相殺されるからです。したがって、福岡側だけに検出器を置いた場合、福岡での光子到達予定時刻より前の光子の状態は、「福岡側の光子と札幌側の光子との重ね合わせの状態」だと考えられます。そうすると、福岡で光子を測定することによって、札幌における光子の状態は、「福岡側の光子と札幌側の光子との重ね合わせの状態」から「札幌側の光子が有るか無いかのいずれかの状態」に瞬時に変わると解釈できます。この例のように、非局所的な量子相関を「因果的な作用」として捉えると、それは超光速で伝わる Spooky Action at a Distance だということになります。とはいっても、このような非局所的な量子相関を用いて超光速で信号を送ることはできないので、相対論的因果律と量子力学の正面衝突はあやういところで避けられています。

(つづく)


japan_map_2



Spooky Action at a Distance (2)

アメリカの有名な物理学者ジョン・ホイーラー (1911 - 2008) は、現在の選択者が過去の光子の状態を選択できるように見える実験、いわゆる遅延選択実験を提案しました。前回の実験系を用いて、ホイーラーのアイデアを説明しましょう。下図のように、前回の実験系において日本海の海上のハーフミラーを光路から外した状況について考えてみます。この状況で、光子がロシア側で検出されれば、光子は福岡経由の光路を通ってきたと考えられます。逆に、光子がコリア側で検出されれば、光子は札幌経由の光路を通ってきたと考えられます。ですから、日本海の海上のハーフミラーを光路から外した状況では、光子は福岡経由の光路か札幌経由の光路かのいずれか一方の光路を通ってきたと考えられます。


japan_map_3

一方、日本海の海上のハーブミラーが光路に挿入されている場合は、ロシア側だけで光子が観察されることから、東京のハーフミラーと日本海の海上のハーフミラーとの間に存在した光子は、福岡経由の光路を通る状態と札幌経由の光路を通る状態との重ね合わせの状態であったと考えられます。そこで、日本海の海上のハーフミラーを、光子がそこに到達する直前に光路から外したとしましょう。すると、そのハーフミラーを外す直前までは、光子は福岡経由の光路を通る状態と札幌経由の光路を通る状態との重ね合わせの状態であったといえるのに、そのハーフミラーを外して光子を測定した途端、光子は福岡経由の光路か札幌経由の光路かのいずれか一方の光路を通ってきたことになってしまいます。このように、この実験は、日本海の海上のハーフミラーを光路に挿入するか光路から外すかを選択し実行することによって、その選択者が過去の光子の状態も選択できるように見えるので、遅延選択実験と呼ばれています。


遅延選択は、現在から過去へに向かう Spooky Action at a Distance(遠隔怪作用)だということができます。とはいっても、このような遅延選択を用いて過去へ信号を送ることはできないので、ここでも、相対論的因果律と量子力学の正面衝突はあやういところで避けられています。ホイーラーは、P. C. W. デイヴィスの質問に答えてこういっています。「第1のハーフミラーから検出器にいたるまで、光子が何をしていたかについては、我々には語る資格がありません。結局、それが記録されるまでは、基本的量子現象は現象ではないのです。」

たしかに、光子が福岡経由と札幌経由との重ね合わせの状態から福岡経由か札幌経由かのどちらか一方の状態へと遷移する過程を量子力学によって記述することはできません。とはいえ、「量子力学によって記述できないのだから、我々にはその遷移について語る資格がない」として沈黙するのは、教条主義的な態度のような気もします。しかしむしろ、力学(: 対象の状態変化を相互作用に基づいて記述しようとする試み)の限界をわかりやすく示してくれたという意味で、我々はホイーラーの言説を肯定的に捉えるべきでしょう。

(つづく)



Spooky Action at a Distance (3)

光子の状態が、福岡経由と札幌経由との重ね合わせの状態から福岡経由か札幌経由かのいずれか一方の状態へ遷移することは客観的事実です。そうであれば、その遷移の境界を特定する遷移法則があってしかるべきです。しかし、ホイーラーの遅延選択実験は、その遷移法則が相互作用によって導けないことを示しています。では、何を手がかりにすれば、その遷移法則にたどりつけるのでしょうか。

ズバリ、その答えは相対論的因果律です。


光子の状態が、福岡経由と札幌経由との重ね合わせの状態から福岡経由か札幌経由かのいずれか一方の状態へ遷移したのには必ずその原因があったはずです。その原因が日本海の海上のハーフミラーを外したことだとすると、遅延選択が成立して、原因と結果の順序が逆転してしまうので因果律に反します。しかし、「ハーフミラーの除外」は遷移の究極的な原因だといえるでしょうか。そうはいえないでしょう。なぜなら、それより以前に「ハーフミラーの除外の原因」があったはずだからです。ですから、「ハーフミラー除外の原因」→「状態の遷移」→「ハーフミラー除外」という因果律に矛盾しない推移がありえるのです。下の動画を見てください。


japan_anime

この動画は、「ハーフミラー除外の原因」が能登半島の突端で起こり、光速の伝播過程を介して、日本海の海上のハーフミラーが光路から外される様子を表しています。ここで、「ハーフミラー除外の原因」から光速以下で到達できる時空領域は、能登半島の突端から広がっていく円内の領域です。その円内の光子は、福岡経由か札幌経由かのいずれか一方の状態になっていることが経験的事実から帰納できます。その経験的事実とは、その領域では光子は必ず福岡経由か札幌経由かのいずれかの光子として検出されるという事実です。一方、その円外の光子は、福岡経由と札幌経由との重ね合わせの状態になっていることが量子力学から演繹できます。というのは、その領域の光子のような測定されえない系に対しては、量子力学が無条件に適用できるからです。なお、この動画において赤の実線,ピンクの実線,赤の点線はそれぞれ光子の軌跡を表しています。ピンクの実線で表した光子の軌跡は、福岡経由と札幌経由との重ね合わせの状態にある光子の軌跡です。また、赤の点線で表した光子の軌跡は、福岡経由か札幌経由かのいずれか一方の状態にある光子の軌跡です。

(つづく)



Spooky Action at a Distance (4)

われわれは、相対論的因果律に基づいて、「○も×も」の量子力学的な重ね合わせの状態から、「○か×か」の古典力学的な混合状態への遷移を記述する法則を導き出しました。この遷移法則は次のように要約できます。


測定対象の状態に関する量子的な純粋状態から古典的な混合状態への遷移は、その測定の原因事象を頂点とする未来光円錐(以下「測定の未来光円錐」という)の超円錐面で起こる。


ここで、量子的な純粋状態とは、複数の状態の重ね合わせとして表すことができる状態であって、それらの複数の状態が建設的にあるいは破壊的に干渉できる状態です。一方、古典的な混合状態とは、確率的に混合された複数の状態であって、その内のいずれか1つが測定されるであろう、あるいは、測定さたであろう状態です。「測定の未来光円錐」の例を、下図に示します。


future_light_cone

この図のように、時間軸ctと、空間軸x,yによって張られた時空図は、ミンコフスキー時空図と呼ばれています。ミンコフスキー時空図上の1点から広がっていく光波面は、その点を頂点とする未来光円錐として表されます。この図では、測定の原因事象を原点に置き、そこを発する光波面が「測定の未来光円錐」として描かれています。また、1個の量子的粒子の軌跡(世界線)が赤の実線,ピンクの実線,赤の点線によって描かれています。ただし、ピンクの実線は1個の量子的粒子が2つの経路に重ね合わせの状態として存在する量子的な純粋状態を表し、赤の点線は1個の量子的粒子が2つの経路のどちらかに確率的に存在する古典的な混合状態を表しています。つまり、この図では最初1つの経路を進んでいた量子的粒子が途中で2つの経路に分かれ、さらに2つの経路のどちらか一方で量子的粒子が検出される様子が描かれています。量子的粒子の世界線が「測定の未来光円錐」の超円錐面を境としてピンクの実線から赤の点線に、つまり量子的な純粋状態から古典的な混合状態への遷移していることが見て取れます。


1935年、エルヴィン・シュレーディンガーは「シュレーディンガーの猫」という有名な思考実験を提案しました。箱の中にラジウムの塊とガイガーカウンターと青酸ガス噴出装置が置かれていて、ガイガーカウンターがラジウム原子からのアルファ粒子を検出すると青酸ガス噴出装置が作動して箱内に青酸ガスが充満するように設定されています。もし、この系に量子力学の重ね合わせの原理が無制限に適用できるとすれば、この箱に閉じ込めた猫は、観測者が観測窓を覗くまでの間は生と死の重ね合わせの状態にあるといえます。しかし、猫が生と死の重ね合わせの状態にあるとは考えられないので、量子力学だけでは猫の状態を正しく記述できないということがわかります。


実に4分の3世紀に渡って、シュレーディンガーの猫は人々を悩まし続けてきました。しかし上述の遷移法則を適用すれば、箱の中の猫の状態が生か死かのいずれか一方の状態であることが直ちに明らかになります。すなわち、アルファ粒子の測定に関する「測定の未来光円錐」の中では、アルファ粒子は無いか有るかのいずれか一方の状態だといえます。そうすると、青酸ガスは噴出されていないか噴出されているかのいずれか一方の状態だといえます。ゆえに、猫は生きているか死んでいるかのいずれか一方の状態だといえます。

(つづく)



Spooky Action at a Distance (5)

われわれが導いた測定対象の状態に関する遷移法則を足がかりとして、タイムコミュニケーションの可能性について考えていきましょう。まず、量子相関状態(エンタングルメント状態)にある粒子ペアに関して、粒子を測定しないか測定するかによって、量子相関状態がどのように変化するかについて見てみましょう。ただし、量子相関状態にある粒子ペアとは、例えば、任意の方向に関するスピンの測定について、一方の粒子が上向きスピンなら他方の粒子は下向きスピンといった相関が成り立つような状態にある粒子ペアです。


entanglement

上の2つの図は、時間軸ctと空間軸xにより張られたミンコフスキー図です。左上の図は、量子相関状態にある粒子ペアの各粒子が測定されずに時空点Aと時空点BにおいてAliceとBobの目の前を通過する場合を表しています。この場合、粒子ペアの状態は純粋状態であることが量子力学から演繹できます。右上の図は、量子相関状態にある粒子ペアの一方を時空点A'でAliceが測定した場合を表しています。この場合、粒子ペアの状態は、「測定の未来光円錐」の内側において古典的な混合状態であることが経験的事実から帰納できます。そこで、Aliceが一方の粒子を測定しないか測定するかということは、粒子ペアの状態が量子的な純粋状態であるか古典的な混合状態であるかということに対応しています。とはいえ、このようなな非局所的な相関を通信に利用することはできません。なぜなら、Bob側の粒子の測定値は、Alice側の粒子の測定・非測定に関係なく、常にランダムに分布するからです。つまり、ランダムな系自体からは何の情報も抽出できないということです。これは、熱平衡系自体から有効エネルギーを抽出できないということと同じことです。


しかし、上の図のような素朴な系の考察だけで、タイムコミュニケーションの可能性を排除することは、いかにも片手落ちのような気がします。「いやいや、タイムコミュニケーションの不可能性は、とっくの昔にエーベルハルトよって論証されていますよ。」という声が聞こえてきそうです。しかし、よく考えてみてください。タイムコミュニケーションを否定するエーベルハルトのNo-Go定理は、測定前の測定対象の状態が測定装置の選択に依存しないことを前提にしています。ところが、われわれの遷移法則が正しいなら、測定前の測定対象の状態は測定装置の選択に依存するので、エーベルハルトのNo-Go定理は一般には成立しないということになります。したがって、タイムコミュニケーションの可能性を検討する余地は十分に残されているといえます。

(つづく)



Spooky Action at a Distance (6)

量子相関状態にある粒子ペア(以下EPRペアという)を一組みだけ使って、タイムコミュニケーションを行うことはできません。それならば、EPRペアを二組使ったらどうでしょうか。面白いことに、使用するEPRペアを一組から二組にしただけで、タイムコミュニケーションへの可能性は大きく膨らみます。


epr_pair_1

上の図は、互いに独立した2個のEPRソースから放出された二組のEPRペアのそれぞれの粒子が、時空点Aと時空点Bで出会う様子を表しています。考え易くするために、EPRペアは光子ペアだとします。また、2つのEPRソースは全く同じように構成されているものとします。すると、それぞれの光子は独立に測定しない限り識別不可能だといえます。図のように時空点Aと時空点Bとにハーフミラーを設置すると、EPRペア毎に光子を独立に測定することが原理的に不可能になります。そこで、ハーフミラーの出口では不可識別の光子同士が干渉して、2光子干渉という現象が観測されます。ここでは、2光子干渉の詳細には立ち入りませんが、光子の不可識別性が2光子干渉の必要条件であることだけは覚えておいてください。つぎに、時空点A'でハーフミラーを外すことによって、AliceがEPRペア毎に光子を独立に測定したらどうなるか考えてみましょう。下の図を見てください。


epr_pair_2

この場合、われわれの遷移法則によって、Aliceの測定の原因事象Cを頂点とする「測定の未来光円錐」の中では、EPRペアは古典的な混合状態であるといえます。このことは、時空点B'にあるハーフミラーに入射する2つの光子のそれぞれが原理的に識別可能になるということを意味しています。したがって、1番目の図の様に光子が識別不可能である場合と、2番目の図のように光子が識別可能である場合とで、Bob側のハーフミラーの出力状態が異なる可能性が出てきます。つまり、Aliceがハーフミラーを光路に入れたり光路から外したりすることによって、それよりも過去に位置するBob側の出力光子の測定値が変化して、AliceからBobへのタイムコミュニケーションが成立する可能性があります。


以上の考察では、タイムコミュニケーションに利用可能な2光子干渉の詳細については立ち入りませんでした。実は、そのような2光子干渉としてHOM干渉と呼ばれる効果が現実に存在しています。HOM干渉を用いたタイムコミュニケーションの原理については、節を改めて説明します。

"Spooky Action at a Distance" 完



ダブルHOM干渉

タイムコミュニケーションの原理(ダブルHOM干渉)を説明する前に、HOM干渉と呼ばれる2光子干渉について説明しておきます。1987年、ホン,オウおよびマンデルはHOM干渉と呼ばれるユニークな2光子干渉効果を実証しました。


HOMI

上の動画は、HOM干渉の概念を示したものです。HOM干渉とはハーフミラーHMの2つの入力ポートそれぞれに同時に1個ずつ光子を入力した場合見られる2光子干渉です。ハーフミラーHMに同時に入力した光子は、2光子干渉によって二つの出力ポートのどちらかに一方に偏って出力され、検出器D1,D2で一塊になった状態で検出されます。そのため、同時計数器CCの同時計数率はゼロになります。ただし、ハーフミラーへ同時に入力される2光子が互いに識別できる場合にはHOM干渉は起こりません。入力される光子の不可識別性は、HOM干渉の必要条件です。なお、直感的理解を助けるために上の動画では光子を可視化しています。しかし、当たり前のことですが、測定前の光子を見る(測定する)ことはできません。厳密にいえば、ハーフミラーHMを出た測定前の光子の状態は、上光路に2個ある状態と下光路に2個ある状態の重ね合わせの状態(量子的純粋状態)、あるいは、上光路に2個ある状態か下光路に2個ある状態かの確率的な混合状態(古典的混合状態)として記述されます。また、既述の遷移法則が正しければ、量子的純粋状態から古典的混合状態への遷移は、測定の未来光円錐の超円錐面で起こります。ですから、光子がハーフミラーHM通過時点で測定の未来光円錐の中にある場合には、光子の状態はハーフミラーHMを出た時点から古典的混合状態だといえます。参考のために、各状態の数式を下記します。


入力光子の状態

formula_b1

出力光子の状態: 量子的純粋状態

formula_b2

出力光子の状態: 古典的混合状態

formula_b3

ただし、|1>は1光子状態,|2>は2光子状態,添え字lu, ll, ru, rl はそれぞれ{左上光路,左下光路,右上光路,右下光路},Aは 検出器D1での2光子検出事象,Bは検出器D2での2光子検出事象を表します。


【補注】検出前の光子の状態は、密度行列を使って量子的混合状態として記述される場合もあります。しかし、量子的混合状態は測定事象に対応しない純粋状態にも分解できてしまうので「現実の測定に対応する確率的な混合状態」として採用することはできません。


今後、確認のために、必要に応じて数式を示します。数式が意味が分からない読者は、それらを無視していただいて結構です。数式を無視しても、原理の理解には差し支えありません。

(つづく)



ダブルHOM干渉(2)

ダブルHOM干渉を実現するためには、EPR光子ペア(以下単にEPRペアという)を生成するEPRソース(EPR光源)が必須です。ここで利用するEPRペアとは、一方の光子のエネルギーを測定すれば他方の光子のエネルギーも確定し、または、一方の光子の放出時刻を測定すれば他方の光子の放出時刻も確定するような量子相関状態にある光子ペアです。EPRソースとしては、パラメトリック下方変換器というものを利用します。パラメトリック下方変換器は、非線形光学結晶と呼ばれる材料を加工したもので、そこにレーザ光(ポンプ光)を入射させると、一定の確率で、ポンプ光の中の1光子がアイドラー光子とシグナル光子とからなるEPRペアに変換されます。ポンプ光はレーザ光なので、その光子のエネルギーEpは一定です。また、エネルギー保存側から、ポンプ光の光子のエネルギーEp,アイドラー光子のエネルギーEiおよびシグナル光子のエネルギーEsは、Ep=Ei+Esという関係になります。ですから、アイドラー光子のエネルギーEiを測定すれば、シグナル光子のエネルギーEsが確定するような量子相関が成立します。下に掲げた図は、Wikipediaからの引用図です。参考にしてください。


pdc

(つづく)



ダブルHOM干渉(3)

EPR相関について、もう少し説明しておきます。下の図のように、EPRソース(パラメトリック下方変換器PDC)からアイドラー光子iとシグナル光子sとが互いに反対方向に放出され、アイドラー光子iのエネルギーをアリスが測定し、シグナル光子sのエネルギーをボブが測定するものとします。


eprc_1

我々の遷移法則によれば、EPRペアが放出される時点において、すでに測定の原因事象Cが起こっていれば、EPRペアはその放出時点から古典的混合状態であるといえます。この状況は、下図のようなミンコフスキー時空図によって表すことができます。


eprc_2

測定の原因事象Cを頂点とする測定の未来光円錐の中では、アリスとボブは、自分の側だけでなく、相手の側でも光子のエネルギーが測定されることを原理的に知りえる立場にいます。ですから、そこでは「EPRペアは古典的混合状態である。」と断言しても何の矛盾も生じません。では、次の図のようにEPRペアが放出された時点において、アリスもボブも光子を測定する確率がほぼゼロとみなせるような場合はどうでしょうか。このような場合は、アリスもボブも放出時点のEPRペアを量子的純粋状態と記述する以外にありません。


eprc_3

それならば、EPRペア放出時点では測定が行われる確率がほぼゼロであることには変わりは無いが、その後、各光子がアリスとボブのところに到達する直前に、アリスの測定とボブの測定が独立に決定された場合はどうでしょうか。その場合は、次の図のように、測定の原因事象Ca, Cbはアリスの側とボブの側のそれぞれにありますから、測定の未来光円錐は2つ設定されます。


eprc_4

これは、非常に興味深い状況です。この場合、アリスが光子のエネルギーを測定したとしても、そのとき彼女は「ボブの光子のエネルギーは、私の測定値と相関している。」と断言できません。なぜなら、この状況設定では、アリスが光子のエネルギーを測定しても、ボブは光子の放出時刻を測定する場合があるからです。つまり、その場合、それぞれの測定値が相手側の未測定の物理量と相関しているとすると、結果的にEPRペアのエネルギーと放出時刻との両方が確定し、不確定性原理に反してしまうからです。したがって、光子のエネルギーを測定した時点のアリスがいえることは、「ボブが光子のエネルギーを測定して量子相関が達成される極めて低い可能性がある。しかし、ボブの側に到達する光子のエネルギーは不確定である可能性が極めて高い。」ということだけなのです。このような結論は一見エネルギー保存側を破っているようにも見えます。しかし、エネルギー保存側は測定しえる範囲で正しければ法則として事足りることに注意してください。つまり、アリスとボブの両者が共に光子のエネルギーを測定する場合に、エネルギー保存側が問題になります。その場合、2つの測定の未来光円錐が重なり合った時空領域に位置するアリスは「ボブの位置へ到達する(到達した)光子のエネルギーは、私が測定する(測定した)光子のエネルギーと相関している。」と断言できます。


しばしば安易に、「アリスが光子のエネルギーを測定すれば瞬時にボブの光子のエネルギーも決まる。」と言われます。しかし、上記の考察からそのような言い方は明らかな間違いだとわかります。我々が観測対象の状態を正確に記述するためには、測定の未来光円錐の位置と、いつどこ(どの時空点)の記述者の立場で記述しているのかとを明確に示さなければなりません。

(つづく)



ダブルHOM干渉(4)

いよいよここから、タイムコミュニケーションの原理(ダブルHOM干渉)の説明に入ります。ダブルHOM干渉計の概念図を下に示します。


dhomi_1

この図のように、ダブルHOM干渉計は2個のパラメトリック下方変換器(EPR光源)PDC1, PDC2と、それぞれの光源を出たアイドラー光子i1, i2を合波するハーフミラーHM1と、それぞれの光源を出たシグナル光子s1, s2を合波するハーフミラーHM2とからなります。ここで、パラメトリック下方変換器PDC1, PDC2は、全く同じ出力特性を持っているものとします。すると、ハーフミラーHM1から出力されるアイドラー光子がどちらの光源から来た光子なのかを識別することは原理的に不可能になり、同様に、ハーフミラーHM2から出力されるシグナル光子がどちらの光源から来た光子なのかを識別することも原理的に不可能になります。つまり、アイドラー光子i1とアイドラー光子i2とは不可識別なっており、同様に、シグナル光子s1とシグナル光子s2とは不可識別になっています。ゆえに、ハーフミラーHM1にアイドラー光子i1とアイドラー光子i2とが同時に1個ずつ入力される場合は、HOM干渉によって光子は2つの出力ポートのどちらか一方に一塊になって出力されます。同様に、ハーフミラーHM2にシグナル光子s1とシグナル光子s2とが同時に1個ずつ入力される場合は、HOM干渉によって光子は2つの出力ポートのどちらか一方に一塊になって出力されます。とはいえ、そのことだけで、ボブの側に置かれた同時計数器CCの同時計数率がゼロになるとはいえません。なぜなら、片方の光源から2個以上一塊になって放出されたシグナル光子群が、ハーフミラーHM2で分割されて上下の出力ポートから出力される可能性があるからです。そこで、HOM干渉の効果を顕著に観測するためには、まず、EPR光源1個につき同時に3ペア以上の光子が放出されないようにポンプレーザ光の強度を抑制します。そしてさらに、図のように2光子吸収体TPA1, TPA2を設置して、片方の光源から2個一塊になって放出されたシグナル光子をハーフミラーHM2の手前で除去します。このような工夫を施すことで、HOM干渉の効果が顕著に現れて同時検出器CCの同時計数率はほぼゼロになります。

(つづく)



ダブルHOM干渉(5)

ダブルHOM干渉計において、アリスの側のハーフミラーHM1でアイドラー光子i1, i2を合波し、ボブ側のハーフミラーHM2でシグナル光子s1, s2を合波するとHOM干渉が成立して、ボブ側の同時計数器CCの同時計数率がゼロになることが分かりました。それでは、下の図のようにアリスがハーフミラーHM1の手前の光路をシャッターSHで遮蔽してアイドラー光子i1を測定したら、ボブの側にある同時計数器CCの同時計数率はどうなるでしょうか。


dhomi_2

常識的に考えれば、アリスが何をしようがボブの側の同時計数率はゼロのままだと考えられます。しかし、EPR相関を考慮すると、そのような常識が通用しないことが分かります。


具体例として、アリスがシャッターSHでアイドラー光子i1のエネルギーを測定し、かつ、吸収板T1あるいは吸収板T2でアイドラー光子i2のエネルギーを測定した場合について考えてみます。この場合、アイドラー光子i1とアイドラー光子i2のエネルギーEi1, Ei2は独立に測定されますから、一般的に異なる値として測定されます。ここで、シグナル光子s1がアイドラー光子i1とEPR相関しているとすると、シグナル光子s1のエネルギーEs1は、ポンプレーザ光の光子のエネルギーEpからアイドラー光子i1のエネルギーEi1を差し引いた値になります。また、シグナル光子s2がアイドラー光子i2とEPR相関しているとすると、シグナル光子s2のエネルギーEs2は、ポンプレーザ光の光子のエネルギーEpからアイドラー光子i2のエネルギーEi2を差し引いた値になります。したがって、その場合、ハーフミラーHM2から出力されるシグナル光子のエネルギーを測定すれば、それが光源PDC1から放出されたシグナル光子s1なのか、それとも、光源PDC2から放出されたシグナル光子s2なのかが原理的に識別可能だということになります。したがって、EPR相関が成立する状況下で、アリスがアイドラー光子i1, i2を独立に測定すると、ボブ側におけるHOM干渉が成立しなくなり、その分、同時計数器CCの同時計数率は増大します。


以上の考察から、つぎの結論が導かれます。


ダブルHOM干渉計では、アリスがアイドラー光子i1, i2を独立に測定するか、それとも、アイドラー光子i1, i2をハーフミラーHM1で合波させた上で測定するかに応じて、ボブ側の同時計数器CCの同時計数率が増減する。ゆえに、この新しい量子相関を利用すればタイムコミュニケーション(EPR通信)が実現可能である。ただし、この新しい量子相関が成立するためには、同時計数器CCにおける測定事象が、「アリスの測定に関する測定の未来光円錐」の内側の位置していなければならない。

(つづく)



ダブルHOM干渉(6)

ダブルHOM干渉を利用するタイムコミュニケーションでは、アリスの測定に関する原因事象は、アリスの送信に関する原因事象でもあります。そこで、それを「通信の原因事象」と呼ぶことにします。また同様に、アリスの測定に関する測定の未来光円錐を「通信の未来光円錐」と呼ぶことにします。通信の原因事象Cとアリスの送信事象Aとボブの受信事象Bの時空上の位置関係を下図に示します。


comm_cone

タイムコミュニケーションでは、上の図のように送信事象Aのみならず受信事象Bも通信の未来光円錐の中におさまっている必要があります。なぜなら、受信事象Bは通信の原因事象Cの結果事象に他ならないからです。このような制約はあるものの、上の図で示したように、タイムコミュニケーションでは送信事象Aが受信事象Bより未来に位置する時間逆行通信が可能です。具体的には、下の図に示すように、アリスの側の光路を延長することによって時間逆行通信が実現できます。


dhomi_3

上の図を見ると、アリス側の光路を延長するために何やら複雑なことをやっています。その理由は、アイドラー光子i1, i2の光路をそれぞれ独立に延長しただけでは、それらの光路長が独立に変動してしまうために光路差をゼロに維持できないからです。そこで、ハーフミラーHM1でアイドラー光子i1, i2を合波して光ファイバーコイルOCF1, OCF2を周回させた上で、再びハーフミラーHM1でアイドラー光子i1, i2を分離して帰還させるという手の込んだことをやっているわけです。ここで、逆巻きの関係にある光ファイバーコイル2個を使っているわけは、サニャック効果という効果を相殺するためです。サニャック効果とは、光ファイバーコイル本体が回転すると、光ファイバーコイル本体と同方向に回転する光子と逆方向に回転する光子との間で位相差が生じるという現象です。上の図のようなダブルHOM干渉計を使えば、10μ秒以上の時間逆行通信を精度よく実現することができます。例えば、光ファイバーコイルの総光路長を3kmに設定すれば、タイムコミュニケーションにおける遡行時間は、(光路差3km)÷(光速30万km/sec)=(遡行時間10μsec)になります。

(つづく)



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