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時間逆行通信の検証実験/15.ベースの製作-2

fugaku15

葛飾北斎 富嶽三十六景/従千住花街眺望ノ不二


【物理世界の構造】

  1. 「いまここ」は時空表象の原点である。
  2. 「いまここ」を基準として、過去と未来、原因と結果、可能性と現実性といった時相概念が規定される。
  3. 「いまここ」は私という表象の原点でもある。
  4. 「いまここの私」と通信状態にある他者が「あなた」であり、通信状態にない他者が「彼・彼女」である。
  5. 歴史世界とは「いまここ」を頂点とする過去光円錐中の記録の総体である。
  6. 歴史世界は本源的な原因事象の様相的連鎖によって非決定論的に形成される。
  7. 本源的な原因事象とは確率的な記録事象にほかならない。(たとえば、光子検出器による光子の検出事象や光子の非検出事象では、光子(記録対象)に関する情報が記録環境に確率的に記録される。)
  8. 確率的な記録事象を頂点とする未来光円錐面において可能性が収縮する。
  9. 量子的な記録対象の状態は、記録基底の設定に関する本源的な原因事象を頂点とする未来光円錐面を境界として記録基底に関する様相的混合状態へと遷移する(:様相遷移仮説)。
  10. 歴史世界は現実世界である。
  11. 現実世界以外の物理世界は可能性によって語られる可能世界である。
  12. 時空表象と私という表象とはそれらの原点「いまここ」において一致するので、実体二元論(コペンハーゲン解釈)は誤りである。
  13. 私という表象がユニークだから時空表象もユニークなので、多世界論(多世界解釈)は誤りである。
  14. 物理世界は中立一元論的な表象世界である。

【レイアウト】

手持ちのオプトメカニクス部品を使って、実験装置のレイアウトを検討した(写真13)。


layout

写真13 レイアウトの検討



遅延選択効果を利用した時間逆行通信の理論と解釈

title

Abstract

遅延選択効果を利用した時間逆行通信の実現性が、量子測定の原理的な統計性と相対論的因果律とにもとづく観測理論により保証されることを思考実験によって示した。その考察の過程で、「孤立系はシュレーディンガー方程式に従い決定論的に発展する」という量子力学の公理やその公理を前提とした量子力学の従来解釈(コペンハーゲン解釈や多世界解釈)が相対論的因果律と両立しないことを明らかにした。そこで、相対論的因果律と両立し時間逆行通信を許容する量子力学の公理と量子力学の新しい解釈(中立一元論的解釈)とを提案した。


Keywords: 相対論的因果律 観測理論 遅延選択 時間逆行通信 決定論
コペンハーゲン解釈 多世界解釈 中立一元論的解釈



論文ファーストドラフトPDFファイル ‥‥ 1stdraft_jul_31_2017.pdf




※ 連載の一時中断と論文発表のお知らせ

シリーズ記事『時間逆行通信の検証実験』の連載を一時中断させていただきます。といっても、検証実験の準備に支障が生じたわけではありません。

検証実験の準備より優先すべき論文の執筆に取りかかったためです。


今月中にはその論文を発表したいと考えています。ご期待ください!

TimeComm



時間逆行通信の検証実験/14.ベースの製作-1

fugaku14

葛飾北斎 富嶽三十六景/武州千住


【古典的混合状態と量子的混合状態と様相的混合状態】

量子測定の原理的な統計性を肯定するすべての観測理論は、つぎの2つの前提のどちらかを採用している。


 ‖定時点において、測定対象の状態はある純粋状態から別の純粋状態へと非因果的に遷移する。

◆‖定時点において、測定対象の状態は混合状態(測定値不確定状態)から純粋状態(測定値確定状態)へと因果的に遷移する。


因果律は、物理法則に先立つ物理認識に関する基本的要請であるという立場に立てば、△正しく、量子測定において測定直前の測定対象の一般的な状態は測定基底に対応する混合状態だといえる。ただし、この混合状態は密度行列によって記述される多意的な量子的混合状態(Mixed Quantum State)ではない。なぜなら、測定直前において測定装置の測定基底は一意に確定しているので、その測定基底に関する混合状態も一意だからである。だからといって、この混合状態は記述者の情報不足を反映した古典的混合状態(Mixed Classical state)でもない。なぜなら、量子測定の直前において測定値は原理的な意味で不確定だからである。そこで、測定基底に対応したこの混合状態を様相的混合状態(Mixed Modal State)と呼ぶことにする。


量子測定の直前における測定対象の状態が測定基底に対応する様相的混合状態だとすれば、測定装置を使用した測定により測定値が確定するといえる。例えば、シュレーディンガーの猫の思考実験において、ガイガーカウンターへ向かう測定直前のアルファ粒子の状態が有るか無いかの可能性に対応する様相的混合状態であれば、ガイガーカウンターを使用した測定によりアルファ粒子の有無が確定する。したがって、観測直前の猫の状態は生か死かのどちらかに確定している古典的混合状態だと安心していえる。


測定直前でなくても、ガイガーカウンターによってアルファ粒子の有無を測定することが確定していれば、ガイガーカウンターに向かうアルファ粒子の有無に関する状態が測定直前と異なるといえる因果的理由はない。したがって、ガイガーカウンターの設定に関する原因事象を頂点とする未来光円錐の内側では、ガイガーカウンターへ向かうアルファ粒子の状態は有るか無いかの様相的混合状態だと推定できる。つまり、その未来光円錐面を境界面として可能性の収縮が起こるといえる。このような可能性の収縮はマクロの世界でも現実に起こっている。その一例として、小説「異邦人」に登場する主人公ムルソーの身に起こる可能性の収縮について考察する。独房(孤立系)に収監されているムルソーを死刑に処すか無罪放免にするかの選択が、独房の外で行われる量子コイントス(:死刑/釈放に関する評決の根本原因は本源的な確率事象に帰される)によってなされる場合、もし死刑が選択されたとすれば、その量子コイントスを頂点とする未来光円錐面を境界面として独房(孤立系)のムルソーの運命は死刑に確定する。つまり、その未来光円錐面を境界面としてムルソーの様相的状態は死刑/釈放不確定状態から死刑確定状態へと遷移し、死刑/釈放に関する可能性が収縮する。


測定直前の測定対象の量子状態が測定基底に対応する様相的混合状態であることと、量子測定事象は本源的な確率事象(歴史的事実)であることとは因果的に対応している。そして、その測定基底の設定に関する本源的な原因事象もまた本源的な確率事象である。さらに、その原因事象の原因基底の設定に関する本源的な原因事象もまた本源的な確率事象である。つまり、われわれの歴史は、本源的確率事象の連鎖によって非決定論的に形作られ、その歴史の頂点にいまここの私(実存、観測者)が存在する(図13)。


verify913

図13


【暗箱底部】

暗箱底部(かぶせデコ箱底部)は厚さ4个離乾猗弔噺さ3个離▲襯瀏弔肇轡襯スクリー用アルミ角パイプ枠とで構成した。また、ゴムアルミ積層板に配線用の穴(直径18弌砲魍け、積層板下面に制御台天板を接着した(写真10,11,12)。


暗箱底部上面

写真10 暗箱底部上面


暗箱底部下面

写真11 暗箱底部下面


暗箱&制御台

写真12 暗箱と制御台



時間逆行通信の検証実験/13.かぶせデコ箱の製作-3

fugaku13

葛飾北斎 富嶽三十六景/隅田川関屋の里


【遅延選択実験の様相】

独房(孤立系)に収監されているムルソーを死刑に処すか無罪放免にするかを、独房の外で行われる量子コイントスによって選択する場合、もし死刑が選択されたとすれば、その量子コイントスを頂点とする未来光円錐面を境界面として独房(孤立系)のムルソーの運命は死刑に確定する。つまり、その未来光円錐面を境界面としてムルソーの様相的状態は死刑無罪不確定状態から死刑確定状態へと遷移(様相遷移)し、死刑執行に関する可能性が収縮する。


ムルソーの様相的状態の収縮と同様に、測定過程における測定対象の量子状態の収縮も測定装置の設定の原因となる量子力学的確率事象に対応する可能性の収縮に他ならない。ホイーラーの遅延選択実験を例にとって説明しよう。 図のようなマッハツェンダー干渉計(以下MZ干渉計という)に単一光子を入力する場合について考える。



verify9

図9 MZ干渉計
BS1,BS2:ビームスプリッタ. M1,M2:ミラー. D1,D2,D3:光子検出器.



ただし、光子の状態の変化を図10〜図12のようにct-x平面のミンコフスキー時空図上に示す都合上、MZ干渉計のミラーM1,M2への光子の入射角θを0°とみなし、その経路の屈折率を2(光子の世界線の仰角=tan-12)とする。まず、単一光子をMZ干渉計へ入力する前から「単一光子の干渉を測定すること(検出器D3を光子の経路から外すこと)」が決まっている場合について考える(図10)。この場合は、単一光子がMZ干渉計の右経路にあるか左経路にあるかが全く不確定になるので、MZ干渉計内の単一光子の状態は右経路状態と左経路状態とが重ね合わされた単一の状態(純粋状態)だといえる。したがって、干渉により検出器D1での検出確率はゼロになる。



verify10

図10



つぎに、単一光子をMZ干渉計へ入力する前からMZ干渉計の右経路に検出器D3を挿入して単一光子の経路を測定することが決まっている場合について考える(図11)。この場合は、検出器D3での検出または非検出により右経路における光子の有無が確定する。つまり、検出器D3での検出事象または非検出事象を頂点とする未来光円錐の外側の単一光子は、図11(a)のように右経路で検出され右経路にあることが確定するか、あるいは、図11(b)のように右経路で検出されず左経路にあることが確定するかのどちらかの可能性しかない。したがって、ビームスプリッタBS1から前記未来光円錐面までの光子の状態は右経路状態と左経路状態との混合状態だといえる。ただし、この混合状態は、密度行列によって表される多意的な混合状態ではなく、予定された測定装置の設定に対応する一意的な混合状態(以下、様相t的混合状態という)である。



verify11

図11



以上の観測理論は従来理論に対して以下の利点を有する。


測定対象の状態遷移をローレンツ不変な形で記述して観測問題を解決する。

現行技術で検証可能な新規な効果(時間逆行通信)を予想する。

物理学のパラダイムを超越者の視点に立った客観的(仮想的)な理論体系から人間の視点に立った相互主観的(現実的)な理論体系へとシフトさせて、晩年のアインシュタインを悩ませた「物理学には今がない」というアポリアを解消する。


【かぶせデコ箱の光学被覆】

かぶせデコ箱表面は、外光を遮断するために、厚手のアルミホイルとアルミテープで被覆した(写真8)。


筐体表面

写真8


また、かぶせデコ箱裏面は、迷光を吸収するために、光吸収シートで被覆した(写真9)。


筐体裏面

写真9



時間逆行通信の検証実験/12.かぶせデコ箱の製作-2

fugaku12

葛飾北斎 富嶽三十六景/御厩川岸より両国橋夕陽見


【人称と通信】

非決定論的に発展する物理系を十全に記述するためには、いまここの私(観測者、実存)を物理系の基本要素として導入しなければならない。それは同時に、間制(時制および空間制)概念や人称概念を物理学に導入することを意味する。このうち間制概念は、すでにミンコフスキー時空において、いまここを頂点とする過去光円錐と未来光円錐とによって物理的に意味づけられている。しかし一方、人称概念の物理的な意味付けについてはいままであまり問題にされてこなかった。


ミンコフスキー時空において私(観測主体)は、誕生から死へと至る世界線によって表象され、その世界線上の1点にいまここ私(観測者、実存)が表象される。そして、


「あなた」とは、「いまここの私」と通信状態にある他者であり、
「彼、彼女」とは、「いまここの私」と通信状態にない他者である。


つまり、図8に示したように間制概念と人称概念と通信概念とは物理学において一体的に取り扱われるべき概念である。


verify8

時間逆行通信を使えば現在の私が過去の私に情報を伝達できる。たとえば、現在大地震の揺れを経験しているいまここの私が、時間逆行通信を使って、過去の私に大地震を通報できる。ただし、このような私的な時間逆行通信システムが確実に機能するためには、つぎの二つの条件が満足されなければならない。


大地震発生時点の私は、必ず過去の私に大地震警報を通報する。

大地震警報の受信事象は、その大地震の原因事象を頂点とする未来光円錐の内側にある。


そして、もし上記の,筬△両魴錣涼成が可能性のレベルにとどまれば、その可能性に応じて時間逆行通信も確率的になる。


確率や間制や人称や通信といった概念は、非決定論的に発展する物理世界を記述する上で不可欠である。そして、それらすべては、現実の物理世界の中心、すなわち、いまここの私(実存、観測者)を基準として語られる。


【アルミ枠と黒PS板を用いた筐体の製作】

かぶせデコ箱の下部は、外光を遮断するためにベースと密着させる必要があるので、高い剛性が要求される。そこで、アルミ角パイプを溶接して剛性をもたせたシルクスクリーン用のアルミ枠を採用した。また、筐体上部の骨格は黒PS板で構成した(写真7参照)。


筐体骨格

写真7



時間逆行通信の検証実験/11.かぶせデコ箱の製作-1

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葛飾北斎 富嶽三十六景/礫川雪ノ旦


【Now*Here記号】

私の一生の短い期間が、その前と後との永遠のなかに<一日で過ぎて行く客の思い出>のように吞み込まれ、私の占めているところばかりか、私の見るかぎりのところでも小さなこの空間が‥‥私の知らない無限に広い空間のなかに沈められているのを考えめぐらすと、私があそこでなくてここにいることに恐れと驚きとを感じる。なぜなら、あそこでなくてここ、あの時でなくて現在の時に、なぜいなくてはならないのかという理由は全くないからである。だれが私をこの点に置いたのだろう。だれの命令とだれの処置とによって、この所とこの時とが私にあてがわれたのだろう。

ブレーズ・パスカル『パンセ』第3章205(訳:前田陽一ほか)より


もちろんここでパスカルは、「神の命令と神の処置とによって、この所とこの時とが私にあてがわれた」ことを示唆しているのであるが、彼の意図はさて置き、この問題提起において彼は「私が観測できる時空とその周りに無限に広がっている時空とは物理的本質において何ら変わらない」と仮定している。つまり、彼は物理世界と「いまここという私の意識」とを碁盤と碁石とのように別物として扱っている。パスカルに限らずガリレオやデカルトやニュートンといった自然哲学者が抱いた「物理世界は客観的に実在する」という信念は、ニュートン力学の大成功により疑うことが許されない科学のドグマになった。


「物理世界は客観的に実在する」という信念は、時計仕掛けのように決定論的に発展する特殊な物理系を記述する上では問題を起こさない。しかし、原理的に不確定な事象を伴って非決定論的に発展する一般の物理系を記述する場合、主観を排除して記述することは原理的に不可能である。たとえば、量子コイントス事象を含む物理系を時空図中に厳密に表現するためには、図7の(a)や(b)や(c)のように、いまここが(いまここの私が)その量子コイントスとどのような関係にあるのかを明示しなければならない。


verify7

図7 物理世界の非客観性


図7(a)は、観測者のいまここ(Now*Here記号)が量子コイントスを頂点とする未来光円錐の外側にある状況を表している。この状況では、量子コイントスの結果が表か裏かは原理的に不確定である。一方、図7(b)は観測者のいまここ(Now*Here記号)が量子コイントスを頂点とする未来光円錐の内側にあり、かつ、量子コイントスの結果が表であった状況を表している。他方、図7(c)は観測者のいまここ(Now*Here記号)が量子コイントスを頂点とする未来光円錐の内側にあり、かつ、量子コイントスの結果が裏であった状況を表している。見ての通り、(a), (b), (c)はそれぞれ全く異なる物理的状況を表している。このように、非決定論的な現実の物理的系の記述においては、観測者のいまここ(Now*Here記号)を明示しない限り、つまり、主観的要素を取り入れない限り、ごく単純な系すら十全に記述することはできない。


「物理世界は客観的に実在する」という信念は近代科学思想の中心にあった。しかし、図7により端的に示したように、その信念は誤りである。正解は、「物理世界は相互主観的(間主観的)に実在する」である。そうだとすれば、物理世界と「いまここという私の意識」とを互いに独立した実体として捉える実体二元論や「いまここという私の意識」を物理法則から演繹できる現象として捉える唯物論は誤りである。そこで、私は科学の場において中立一元論を支持する。


【かぶせデコ箱の材料】

かぶせデコ箱(下側ベース部分を除く)の材料(一部未着)について、写真と価格表を以下に示す。


かぶせデコ箱材料

写真6



表3

表3



時間逆行通信の検証実験/10.スケジュール

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葛飾北斎 富嶽三十六景/下目黒


【来世か超現世か】

死ほど恐ろしいものはない。人々は、その恐怖を緩和するために死後の世界すなわち来世があることを信じてきた。ところが、最近になって、その来世に勝るとも劣らず死の恐怖を緩和できる新たなビジョンが現れた。シンギュラリティ(技術的特異点)がSFから現実へとなりはじめたいま、少なくない人々が、現生から超現世へ(線分的人生から半直線的人生へ)と飛躍することを願いはじめたのだ。


来世があったとしても、そこが地獄なら無い方がましだ。来世に対する超現世の優越性は、科学が不老不死と幸福(陶酔)とを同時に約束する点にある。人は機械とつながることと引き換えに半永久的に陶酔し続ける存在へと昇華する。現に地獄の苦しみを味わっている人々が、不確かな来世よりも科学が保障する超現世を熱望しても何ら不思議ではない。


しかし、半永久的に陶酔しつづけるものになるということは、人間をやめることにほかならない。人間は死という宿命をもつ儚い存在だからこそ愛おしく美しく自由なのだ。科学者が夢のような超現世を約束したとしても、表現者(芸術家)はいまを生きる儚い人間でありつづけるだろう。


われわれは、人類史上もっともエキサイティングな時代にいる。知性をもつがゆえに自らを万物の霊長とたたえてきた人間が、自らの創造物にその地位を譲ろうとしている。数学や物理学の未解決問題がAIによって次々と解き明かされ、生身の人間には「彼ら」の理論を完全に理解できない悲しい事態が訪れるのも時間の問題だろう。われわれの社会や価値観は大きく変貌しようとしている。それなのに、大半の人々は未だに旧弊な競争原理に囚われて汲々としている。


【スケジュール】

実験装置の製作と検証実験のスケジュールを下表に示す。


表2

表2 スケジュール



時間逆行通信の検証実験/9.予算

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葛飾北斎 富嶽三十六景/穏田の水車


【予知型市場経済システム】

時間逆行通信にもとづく予知が実現すれば、現行の市場経済システムは破綻する。なぜなら、株・債権・為替・商品などの相場を他者に先駆けて予知できる投資家は、ブラックホールのように市場から資金を吸い上げられるからだ。このような抜け駆けを防止する対策としては、取引所などの中立的な機関が率先して相場変動の予知を行いその結果を公開することが考えられる。公開される予知結果にはそのアナウンス効果も織り込まれているので信頼性は高いが、量子力学的な不確定性のため予知が確率的になることは避けられない。いやむしろ、この原理的な不確定性こそが、投資の集中による市場の破たんを回避する安全弁の役割を果たす。投資家は、公開された予知結果に自らの投資回収期間と確率的リスクへの対応力とを当てはめて最大の利益が見込める対象に投資することになる。他者を出し抜くマネーゲームの醍醐味は激減するが、市場の崩壊は免れる。一方、時間逆行通信にもとづく予知が実現すれば、気象予知・資源探査・製品開発・生産・マーケティング・事業計画などの産業技術全般が飛躍的に進歩して究極的な産業革命が起こる。そして、時を置かず、われわれの文明はテクノロジカル・シンギュラリティへと到達するだろう。


【実験装置予算】

実験装置に関する予算を下表に示す。


表1

表1 実験装置予算



時間逆行通信の検証実験/8.データロガー

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葛飾北斎 富嶽三十六景/青山円座松


【可能性の収縮】

第1のH偏光板を透過した単一光子の偏光状態を、第2の偏光板により測定する場合について考える。ただし、量子コイントスによる選択にもとづいて第2の偏光板ではV偏光板+光子検出器によるHV測定かD偏光板+光子検出器によるDX測定かのどちらかが行われるものとし、なおかつ、その量子コイントスを頂点とする未来光円錐面は第1偏光板,第2偏光板間の光路と交わるものとする。図5は、量子コイントスによりHV測定を選択された場合を示し、図6は量子コイントスによりDX測定が選択された場合を示している。


verify5-6

第1のH偏光板から量子コイントスを頂点とする未来光円錐面までの光子の状態は、図5と図6で何ら変わらない。従来解釈によればその状態はH偏光状態(純粋状態)だとされる。しかし、様相的状態を現実の物理状態であるとする解釈(実存主義的様相解釈)によれば、単一光子の偏光状態はH:50%,V:0%,D:25%,X:25%の様相的なHVDX混合状態である。なぜなら、量子コイントスによりHV測定が選択される可能性とDX測定が選択される可能性とはそれぞれ50%であり、さらに、それぞれの偏光状態に関する可能性は一般化されたボルンの規則により案分されるからである。図5では、HV測定を選択する量子コイントスを頂点とする未来光円錐面を遷移面として様相遷移が起こり、単一光子の偏光状態に関する可能性は下記のとおり収縮する。


(H:50%,V:0%,D:25%,X:25%)→(H:75%,V:25%)


つまり、図5の状況では、第1のH偏光板を透過した単一光子が第2のV偏光板を透過して検出される可能性は25%となり、「クロスニコル配置した一対の偏光板は光を遮断する」という光学の常識が破られる。

一方、図6では、DX測定を選択する量子コイントスを頂点とする未来光円錐面を境界として、単一光子の偏光状態に関する可能性は下記のとおり収縮する。


(H:50%,V:0%,D:25%,X:25%)→(D:50%,X:50%)


以上のように、様相遷移や可能性の収縮といった概念を導入することにより、測定前の量子的粒子の状態の変化を因果的かつローレンツ不変な形で記述できる。


非因果的な摩訶不思議な作用によって「波束が収縮する」のではない。

因果律に則った様相遷移によって「可能性が収縮する」のである。


【データーロガー】(Pico Technology製 DrDAQ 写真5参照)

DrDAQは、科学教材などに使われている簡易なデーターロガーである。その仕様(下記)から、フォトディテクタPDA100Aに適合すると判断した。


・帯域幅: 100kHz

・解像度: 8 bits

・入力タイプ: BNCコネクタ

・入力範囲: ±1.25V、±2.5V、±5V、±10V


データロガー

写真5 データロガーDrDAQ



時間逆行通信の検証実験/7.暗箱

fugaku7

葛飾北斎 富嶽三十六景/五百らかん寺さゞゐどう


【パンドラの箱に残されたもの】

もし、あなたが予知能力を手にしたら、それを何に使うだろう?

為替や株で大儲けする? 災害を予知して多くの人命を救う? 自らの運命を予知する?


予知能力を手にするということは、いつでも最善の選択すなわち神託(オラクル)を手に入れられるようになるということだ。そうだとすれば、それを手にした者の言動はその神託に左右されるようになってしまうだろう。まるで、占い師にマインドコントロールされた人の言動のように‥‥果たして彼は幸せだろうか? いや、そもそも彼は自由な人間だといえるだろうか?


ギリシア神話では、予知能力は忌まわしい能力として描かれている。有名なパンドラの神話の結末の描写には、「パンドラの箱に希望が残った」というよく知られたバージョンのほかに「パンドラの箱から予知能力という最悪の災いが飛び出すことだけは辛うじて免れた」というバージョンもある。われわれ人間は予知能力を持っていないからこそ前途に希望を抱いて生きていけるのであり、予知能力を持った者は自らの悲惨な前途(老病死や裏切りや諍いや挫折)を目の当たりにして生き地獄を味わうことになる‥‥ということか。また、カッサンドラ―の神話ではアポローンから予知能力を授かった凶事の予言者カッサンドラーの悲惨な生涯が描かれている。そのことから、イタリア語では「カッサンドラー」は「不吉、破局」を表す言葉として使われているという。


いずれ、われわれは時間逆行通信技術に基づく予知能力を手にするだろう。そのとき、「カッサンドラー!」と叫ぶことになるのかどうかは、予知能力を持たない今のわれわれには知る由もない。


【暗箱の概念設計】

・光学ベース上での作業性を確保するため、かぶせデコ箱方式を採用し、作業中はデコ箱を外せるようにする。

・デコ箱の外面はアルミ箔でおおい、内面は光吸収シートでおおうことにより、外光を遮断し箱内の迷光を吸収する。

・黒ゴムシートを敷いたベースアルミ板とデコ箱との接続部をスプリングクランプ18個で圧着して外光を遮断する。

・ベースアルミ板に穴をあけて配線を引き込み、黒色接着剤で穴を完全に塞ぐ。

・センサーやサーボモータなどの増設に備えて予備の配線を最初から引き込んでおく。



verify4


図4 暗箱の概念図


1:かぶせデコ箱,2:ベースアルミ板,3:スプリングクランプ 



時間逆行通信の検証実験/6.受信部

fugaku6

葛飾北斎 富嶽三十六景/深川万年橋下


【光子の運命】

独房(孤立系)に収監されているムルソーを死刑に処すか無罪放免とするかの評決が量子コイントスによって決められる場合、ムルソーの運命はその量子コイントスを頂点とする未来光円錐面において死刑または釈放に確定する。死刑に処せられる運命にあるムルソーと釈放される運命にあるムルソーとは様相的にかけ離れた状態にあるにもかかわらず、ムルソーが力学的に孤立しているという理由から、従来の物理学はそれらを同じ物理状態にあるものとして扱ってきた。実際、ムルソーのような巨視的な系の状態の変化はよい近似で決定論的に記述できるため、様相的状態を無視してもかまわない。しかし、光子のような量子的粒子の状態の変化は非決定論的に記述されるため、様相的状態を無視できない。


第1のH偏光板(偏光軸:0°)と第2のD偏光板(偏光軸:+45 °)とを光路上に直列配置し、第1のH偏光板を透過した1個の光子の偏光状態を第2のD偏光板で測定する状況について考える。量子力学のコペンハーゲン解釈では、第1のH偏光板を透過した直後の光子の状態はH偏光状態だとされる(射影仮説)。また、波束の収縮時点を観測者の確認時点に置く解釈でも、光子が第一のH偏光板に到達する予定時刻にそこで吸収されないことを観測者が確認したとすれば、光子がH偏光板を透過したことは確実であり、透過直後の光子の状態はH偏光状態だとされる。さらに、多世界解釈でも、光子が第1のH偏光板を透過した世界では、透過直後の光子の状態はH偏光状態だとされる。そして、第2のD偏光板の測定値はボルンの規則にしたがって半々の確率でD(+45 °)かX(-45 °)かのどちらかになるとされる。しかし、これは可笑しい。なぜなら、第2のD偏光板はH偏光状態にある1個の光子をD(+45 °)かX(-45 °)かのどちらかの偏光状態に確率的に変換する量子電磁力学的メカニズムではないからである。


第2のD偏光板がH偏光状態にある1個の光子をD(+45 °)かX(-45 °)かのどちらかの偏光状態に確率的に変換する量子電磁力学的メカニズムではないないとすれば、第2のD偏光板に入射する直前の光子の状態はDX混合状態(±45°混合状態)だと考えざるをえない。では、光子はいつどのようにしてDX混合状態になったのだろうか。ムルソーが死刑になるか、それとも、釈放されるかの運命が評決の量子コイントスで決まるように、光子がDX測定されるかされないかの運命は、DX偏光測定基底の設定原因となる量子力学的確率事象によって決まる。光子が第1のH偏光板を透過する前から第2のD偏光板が光路に設置されているとすれば、第1のH偏光板を透過した直後における光子の運命は、DX測定によりDかXかのどちらかとして測定されることが確定している。そこで、光子の様相的な状態(運命)がまさしく現実の物理状態であるとすれば、第1のH偏光板を透過した直後から第2のD偏光板に入る直前までの光子の状態は様相的なDX混合状態だと推定できる。


非決定論的に発展する現実の物理世界を記述する上で不可欠な確率や運命や可能性や必然性といった様相概念は、いまここの私(実存、観測者)を基準とする相互主観的(間主観的)な概念である。常識として受け入れられてきた「物理系は客観的に記述できる」という信念は、決定論的な数式によって十全に記述できる特殊な物理系において通用するにすぎない。現実の物理世界が非決定論的に発展しているにもかかわらず、科学の場において「主観を排除した客観的記述」を強要する者の態度は教条主義的だといわざるをえない。


【偏光板と回転マウント】(THORLABS製、写真4参照)

・Φ12.7mm 保護ウインド付きフィルム型偏光子

・Φ12.7mm 光学素子用回転マウント


【フォトディテクタ】(THORLABS製PDA100A、写真4参照)

・波長範囲: 320 - 1100 nm

・帯域幅: DC - 2.4 MHz

・利得: 1.51 kV/A - 4.75 MV/A (Hi-Z Load)

・利得: 0.75 kVA - 2.38 MV/A (50 Ω Load)

・NEP (noise equivalent power: 雑音等価電力): 0.973 - 27 pW/Hz1/2

・アクティブエリア: 100 mm2(10 mm x 10 mm)



フォトディテクタ

写真4 フォトディテクタと回転マウント



時間逆行通信の検証実験/5.送信部

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葛飾北斎 富嶽三十六景/本所立川


【送信者の自由意志】

長らく人々を悩ませてきた自由意志と決定論の問題は、下記のような誤った認識から生じた疑似問題にすぎない。


(誤り)自由意志は、決定論的に培われたユニークな選択機能によって非決定論的に生成される


時間逆行通信と送信者の自由意志とが相互排除的な関係にあるように感じられるのは、上記のような誤った認識から生じた錯覚である。量子現象の非決定性を考慮すれば、自由意志はつぎのように再定義できる。


(正解)自由意志は、非決定論的に培われたユニークな選択機能によって決定論的に生成される


つまり、自由意志を生成する選択機能は主体内外の環境の非決定論的な時間発展に伴って非決定論的にかつユニークに形成されるが、自由意志の発意は特定の発展段階ある選択機能により決定論的に生成される。


【偏光分離吸収板】(THORLABS製偏光板を加工、図3参照)

偏光板の裏面を黒色に塗装(黒色接着剤を塗布)した偏光分離吸収板は、入射光子を偏光フィルム部か裏面塗装部かのどちらかで吸収する。つまり、入射光子の偏光状態は偏光フィルム部において収縮する。測定過程における光子の偏光状態の遷移は因果的に記述できるという立場に立てば、偏光フィルム部に到達する直前の光子の状態は、この偏光分離吸収板の偏光測定基底に関する様相的な偏光混合状態でなければならない。


【低速モーター】(TOKYO MICRO製、図3参照)

1v-5v 3rpm-15rpm 直流マイクロギヤモーター

低速モーター採用の理由は以下のとおり。

送信部/偏光板の回転角の変化と受信部/フォトディテクタの検出値の変化との相関をデータロガーを使ってリアルタイムで確認するため。

受信部/フォトディテクタのNEP (noise equivalent power: 雑音等価電力)における雑音量が、周波数帯域幅の平方根に比例するため。



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時間逆行通信の検証実験/4.ビームスプリッタ

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葛飾北斎 富嶽三十六景/東都浅草本願寺


【力学的因果系列と様相的因果系列】

古典力学的世界観などの決定論的世界観における本源的な原因事象は、宇宙を創生した神の一撃である。そこでは、因果系列がドミノ倒しのような近接作用の連鎖によって決定論的に展開する。そのことから、決定論を信奉する唯物論者や物心二元論者は、因果律と決定論とを混同して扱ってきた。しかし、量子力学ではそのような混同は許されない。たとえば、爆弾検査問題と呼ばれる量子力学的な思考実験(実証済み)では、正常爆弾か不良爆弾かを選り分ける検査が相互作用を介さずに行われる。すなわち、正常爆弾→光子非検出と不良爆弾→光子検出という非力学的な因果系列が存在する。このような非古典的な因果系列は、量子的粒子の状態に関する可能性の収縮にもとづいているので、様相的因果系列と呼ぶのが適当である。ここで重要なのことは、この可能性の収縮をもたらす本源的原因事象が、量子コイントスのような非決定論的な量子力学的確率事象だということである。つまり、われわれの物理世界には、決定論的な力学的因果系列と非決定論的な様相的因果系列という二種類の因果系列が存在する


【ビームスプリッタの利用】

単一光子の光路をビームスプリッタで分岐して、反射側に送信部を設置し、透過側に受信部を設置することにより、送信事象を力学的因果系列に配置し、受信事象を様相的因果系列に配置することができる。本実験では、送信部/偏光板を回転させることにより、それと遠隔配置した受信部/フォトディテクタにおける検出値が正弦的に変化することを確認する。このとき、ビームスプリッタから送信部/偏光板までの光路長をビームスプリッタから受信部/偏光板までの光路長より長くとっておけば、受信部/偏光板に入射する光子の様相的な偏光混合状態を送信事象(送信部/偏光板の角度設定)により遅延選択した形になり時間逆行通信が成立する。ただし、この遅延選択は見かけ上の効果にすぎない。なせなら、光源部/偏光板を透過し、かつ、送信の原因事象を頂点とする未来光円錐の内側にある光子の偏光状態は、すでにその時点で送信事象に対応した混合状態へと様相遷移しているからである。



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写真3 プリズムホルダーとビームスプリッタ(シグマ光機製)



時間逆行通信の検証実験/3.光源部

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葛飾北斎 富嶽三十六景/東都駿台


【準単一光子光源】

時間逆行通信に利用する遅延選択効果は、単一光子系において顕著に現れる。たとえば、H偏光板を透過した1個の光子がD偏光板によって+45°偏光状態(透過)か−45°偏光状態(吸収)のどちらかの状態として測定される場合、D偏光板による測定の本源的な原因事象(量子力学的確率事象)を頂点とする未来光円錐の内側では、H偏光板を透過した光子の運命は+45°偏光状態か−45°偏光状態かのどちらかの状態として測定される運命に確定している。したがって、その未来光円錐の内側、かつ、H偏光板を透過した後の光子の偏光状態は、D偏光板によって測定される直前までの間、±45°の様相的な混合状態である。しかし、H偏光板を同時に多数個の光子が透過する場合は、D偏光板による透過と吸収とが同時に起こるペア事象が一定の確率で生起するので、その分、H偏光板を透過した各光子の運命は+45°偏光状態か−45°偏光状態かのどちらかの状態として測定される運命だとはいえなくなり、遅延選択が無効になる。そのため、多光子系を時間逆行通信に利用することは非現実的である。とはいえ、純粋な単一光子源は入手困難である。そこで、本実験では準単一光子源として微弱なレーザー光源を採用する。


【発光デバイス】

・レーザダイオードモジュール 670nm 3mW CW (シグマ光機製、写真1参照)


レーザーモジュール

写真1 レーザーモジュール


【NDフィルター】

・透過率10-3, 10-4のARコート付きΦ12.7mmNDフィルタ2個をレンズチューブに格納。(THORLABS製、図2参照)

・レンズチューブはレーザー本体に接着。



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・準単一光子源の保証

1Wの光ビーム1m当たりに含まれる光子の数NWは、

NW = λ/(hc2)

したがって、1nWに減光した波長670nmのレーザービーム10cm当たりに含まれる光子の平均個数は、

{λ/(hc2)}×10-9×10-1

= [6.7×10-7/{6.626 ×10-34×(2.998×108)2}]×10-10

≒ 1

よって、写真1のレーザーモジュールを発した光を図2のNDフィルタシステムにより0.3nWまで減光し、かつ、そのコヒーレンス長が10cm未満だと想定すれば、コヒーレンス長内の光子数は平均1個未満になるので準単一光子光源が実現できる。


【偏光板】

・可変目盛り付きホルダに格納。(シグマ光機製、写真2参照)


偏光板1

写真2 可変目盛り付きホルダ



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